2023年12月2日土曜日

【中山道】諏訪宿、塩尻宿

一年強ぶりの中山道歩きになります。今回は下諏訪宿から福島宿までを二泊三日で歩きます。三留野宿から京都へは踏破済みなので、今回のルートを踏破すればあと一回のツアーでいよいよ中山道プロジェクトも完了ということになります。



前々回から歩いている道のりは中山道のなかでも最も標高が高く起伏の大きな箇所になります。中山道を通して最大の難所が前回歩いた和田峠、次に碓氷峠(うすいとおげ)です。

今回のルートには鳥居峠があり、木曽路最大の難所と言われていました。

「峠を越える」と言うから街道歩きの人にとっては峠は最高地点を言いますが、登山をする人にとっては稜線歩き(トレッキング)の最低地点なんですよね。「難所」と言っていますが、一番歩きやすい地点を結んでいるのが中山道なわけです。

ちなみに木曽路とは中山道のなかで贄川(にえかわ)宿から馬籠宿までを言います。


これら中山道の難所は、糸静線と枕崎千葉構造線にはさまれたフォッサマグナに存在しています。本州で2つの陸地が合体したシワシワの場所ですね。



今回は二泊三日の旅ですが、結果をまとめると下記の通りです。
  • 1日目:下諏訪宿~塩尻宿(塩尻峠越え) 5時間  25000歩
  • 2日目:塩尻宿~奈良井宿       6時間  33000歩
  • 3日目:奈良井宿~福島宿(鳥居峠越え) 6時間半 34000歩
全体を通して、最も印象に残った場所は宿場町の面影を存分に残した奈良井宿、そして諏訪湖の全景と富士山まで展望できた塩尻峠、加えて鳥居峠から見た白く輝く御嶽山でした。

グルメ的には、有名な塩尻ワイン、そして三日間の3回の昼食に信州そばをいただきました。

道程については宿場町や峠の前後を除き、多くは国道19号沿いを歩くのであまり楽しくはありませんでした。

1日目:下諏訪宿、塩尻宿


1日目のルートと記事に紹介した場所を地図に記しました。




朝7時台の新幹線に乗り名古屋で、「特急しなの」に乗り換えて下諏訪駅で下車します。江戸から随分歩いてきたので新幹線で東京まで行かずにすむので交通費が助かります。

木曽路を含む名古屋から塩尻までの中山道は「特急しなの」が走る中央本線、そして国道19号線と中央自動車道(E19)が走っているので交通の便は悪くありません。



少し早いのですが、ここで食べないとランチ難民になるので下諏訪駅から歩いて7分ほどの「蕎麦屋みのり」で今回の旅の最初のそばをいただきます。ねばりがあってさすがの信州そばの美味しさです。ですが、前回食べた田毎庵(たごあん)の方が随分おいしかった。田毎庵は、諏訪湖の南東なのでちょっと遠くて行けませんでした。



信州そばで気分があがったところで街道歩きを本格スタート。

これは魁塚(さきがけづか)と名の付く相楽総三(さがらそうぞう)の記念碑。相楽は戊辰戦争の最中、新政府の指示に従わずに赤報隊を指揮して勝手に東国での討幕活動を進めたために新政府の怒りを買って処刑されてしまう。死後に名誉回復されたそうですが自分で真っ先に進めたので魁(さきかげ)といわれているのでしょう。



立派な一之宮常夜燈。今日は11月末から12月に入って例年より寒い日が続いていますが空は晴天です。



今井番所跡。口留番所(くちどめばんしょ)というのは江戸幕府による国家による関所と違って、各藩が自主的に設けた関所の小型版といったもの。監視するのは関所と同じく、罪人や女、鉄砲など。

番所を過ぎると塩尻峠の登り坂が始まります。



塩尻峠を登って行くと諏訪湖が見えてきました。



長野自動車道の塩嶺(えんれい)トンネルの入り口上にある石船観音。石の上に観音様が祀られているということだけどどうなっているのかよく見えない。


すぐ横に清流が音を立てています。昔は中山道を行く旅人が喉を潤したそうです。



後ろを振り返ると諏訪湖の上に富士山が!



ズームで見ると雄大な山容の一部に山頂がはっきりと見えます。先月11月に箱根の金時山で富士の姿を堪能してきたばかりですが、やっぱりこのお姿が別格ですな。



今回の旅で一番感動したのが塩尻峠展望台からの景色。左に八ヶ岳、右に南アルプス、そして富士山が諏訪湖を取り囲んでいます。

さきほど見えていた富士山の頂上は雲にかかってしまっていますが、充分素晴らしい景色です。



この塩尻峠から北に行ったところにある高ボッチ高原の景色も素晴らしいらしいです。



銀嶺の八ヶ岳。一度登ってみたいけど無理だろうなぁ。



塩尻峠を下りた途中で見かけた看板。街道も山歩きも野仏(自然)は人を分け隔てなく迎え入れてくれる。そのへんが魅力なんだろうね。



ある公家が飼い犬にこの清水を飲ましたところ愛犬が元気になったという逸話がある。今は水は枯れてしまっています。無名の人物というか犬にまつわる名所は珍しい。



下諏訪宿のなかで犬飼の清水を描いた歌川豊国の浮世絵。犬飼の清水というか、名前が同じ犬飼現八という歌舞伎役者の絵になってしまっている。やっぱり大衆が見たいのは清水じゃなくて男前なんでしょうね。こういうサービス精神のおかげで豊国は歌川一門を有名にしたわけです。

(「文化遺産オンライン」より)


街道に見慣れないスパニッシュな建物と思いきや、ワイナリーです。正直言うと、塩尻がワインで有名だということを知りませんでした。よし、今夜はワインだな。



道路の先に塩尻の街並みが見えてきます。標高740mの塩尻までずうっと下り坂が続きます。



柿沢村の本棟民家。本棟造りというのは信州中南部で見られる家屋で特徴は「雀踊り」と言われる屋根の上に乗っている飾りにあるそうです。

確かに鳥が羽を広げているように見えます。ただの飾りなのか何か目的があるのかわかりません。



木曽義仲を祀って創建された永福寺。木曽路に入ってくると、木曽義仲にまつわる史跡が色々と出てきます。女、しかも強い女たちにモテた豪傑。平家の大軍を火牛の計で壊滅させた戦略家。けれども京に行っては公家文化になじめず馬鹿にされ、従兄弟の頼朝、義経に裏切られて壮絶な最期を遂げる。となったら地元で人気が出ないはずがないですね。



男女双体道祖神。今回の旅では双体道祖神をたびたび見かけます。お酌をしているのもありますが、この二人はさらに仲睦まじくくっついているのが珍しい。



小野家住宅。重文なだけあって間口の大きな立派な家屋です。元は旅籠だったそうなので同様の部屋が並んでいます。



塩尻宿に到着。広い空き地に見えますが、ここには明治まで中山道最大の建坪を誇る本陣があったそうです。

塩尻という地名の由来は、塩の道の終点であったことから来ているそうです。昔は塩は海水から生産されていましたが、太平洋側と日本海側それぞれで作られた塩がこの塩尻まで運ばれたそうです。



この軒下のぶら下がっている玉は杉玉といって酒屋さんのシンボルです。本陣を経営していた川上家は造り酒屋もやっていました。

杉玉は良質の酒ができるようにとの願いが込められていて奈良の三輪山にある大神神社(おおみわじんじゃ)が発端だそうです。



堀之内村の名主の住宅。これも重文です。さっき柿沢村で見たのと同じ本棟造りで、屋根には雀踊りがあります。



雀踊り、よく見ると頭に三本の角が生えています。王冠のようで地域のボスの家、といったところでしょうか。



中山道からすこし離れますが、今夜の宿であるホテル中村屋に向かいます。途中にあったレトロな映画館。今でもちゃんと営業されています。アートフィルム的な名画から「団地妻~」的な映画まで幅広くやっておられます。



下諏訪駅から4時間以上歩いたので塩尻の町の銭湯(桑の湯)で温まることにしました。煙突が立っているのが銭湯らしくていいですね。

入ってみると番台に座っていたのが20台くらいの女子。裸のおっちゃんの話し相手になったりして立派です。

旅の垢を落としてほっこりと温まりました。



銭湯から出たら午後4時。もう夕暮れです。ここで駅舎の中にあるワインバー「アイマニ」に行きます。電車を待つ合間にワインでも、と良い名前を付けたものです。



地方のJR駅舎にあるとは思えないこじゃれたお店です。ワイン好きっぽい人たちが塩尻ワインを目当てに来ています。



まずは白ワイン。シャルドネです。明日歩く予定の洗馬宿のそばにあるワイナリー「Belly Beads」のワイン。ラベルが洒落てます。味も本格的なシャルドネで日本でここまで造れるようになったのは立派かなと思います。

塩尻ワインは桔梗ヶ原(ききょうがはら)と呼ばれる大地で育てたブドウで生産されています。桔梗ヶ原は水が引けないので農地に適しておらず荒れ野だったところ明治時代からブドウ畑として利用されるようになったということ。

いわゆる信州ワインとか長野ワインの発祥の地は、ここ塩尻の桔梗ヶ原だったと初めて知りました。しかも明治時代からと歴史も古い。昭和の頃の日本のワインは甘くて女性向けというイメージでしたが、塩尻ではしっかりと本格ワインを造っていた人たちがいたのですね。

鳳蘭の「赤玉パンチ」のCMを思い出しました。



次に赤ワイン。井筒ワイナリーのワイン。多雨である日本のワインはマスカットベリーAしかないのかと思いきやメルローです。メルローは耐寒性があったので栽培し始めたそうですが、これも西洋の品種を造ろうと桔梗ヶ原の人たちが努力した成果のようです。

味の方は多少水っぽさはあるものの、香りは大変素晴らしく、筆者が普段飲んでいる3千円未満のメルローに全くひけをとりません。



塩尻ワインの味見をしたあとは、ホテル中村屋のそばの居酒屋「拓(ひらく)」で信州の日本酒を。前回、諏訪湖に来た時に飲んでおいしかった高天(こうてん)と、塩尻の美寿々(みすず)をいただきましたが、味の方は普通でした。

というわけでお酒をそれなりに飲んでしまったのと疲れていたこともあり、ホテルに帰ったらすぐに寝てしまいました。

ホテル中村屋は、90年代くらいに建てられたと思われる立派なホテルで部屋も快適でした。








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