2022年7月29日金曜日

高野山女人道

(不動坂口女人堂;唯一現存する女人堂)

 

今日はガイドという職業柄、神社仏閣大好きの奥さんの希望で高野山に参ります。高野山は弘法大師空海が開いた寺院ですが、ライバル最澄が開いた比叡山とは全く趣の異なるお寺で、一言でいわせてもらえば「俗」を感じさせます。

知識による洗練さを求めた最澄の比叡山に対して、根源宇宙の呪力であまねく大衆に接した空海の高野山。文字による伝承を否定した空海は、仏教を学問化しようとした最澄を嗤います。

やはり創設者のキャラの違いというのは1200年たった今でも色濃く空気を染めているのは驚きです。

今回は高野山に参ろうにも禁止されて参れなかった女性たちが少しでも高野山のご利益を得ようと高野山の周りを歩いたという女人道を歩きます。

これが実際にあるいたヤマレコ記録ですが、高野山中心部の周りの尾根道をぐるりとほぼ一周するルートになります。

はじめに大門から根本大塔を抜けていった経路も含めて合計距離11km、ゆっくりめに歩いて5時間弱、累積標高は540mでした。

コースは全般的にスギの植林の多い典型的な里山道で、景色は後半で和歌山湾から淡路島までの展望が楽しめる場所はありますが総じて林の中なので、山行としてはたいして面白いコースではありません

ただ、ルート上には高野山中心部に通じる7つの入り口があり、以前はその全てに女人堂が建てられていたので、女人禁制のなかでも信仰を成就しようとした気持ちを想像すると同じ女人として感慨深い、と奥さんは申しております。



ガイドマップは南海電車が手作り感のある大きな観光マップを作っているのと、左下の和歌山県の観光マップを参考にしました。



交通の便は、京都駅八条口から京阪バスの高野山直行便が朝8時に出ているのでそれを利用しました。高速道路を通って約3時間で高野山に到着します。

大門のバス停で下車し大門を通ります。杉の巨木が迫力があります。



弁天公園のスイレン。



中門。



中門にある増長天の胸にはトンボがとまっている。トンボは前には飛べるが後ろに飛べないことから「一歩も後には引かない」決意を表しているそう。

ちょうど今の季節、アブやブヨが多いので、我々もオニヤンマ君を帽子に装着しておりました。



国宝である不動堂。鎌倉時代後期に建設され何度か再建されています。全体的に荘厳さを感じさせますが、屋根の線は優美です。



今回は高野山の中心部は目的ではないので通り過ぎて女人道に向かいますが、なんと、民家の間を通って行きます



ここから女人道のはじまりです。



三輪そうめんの木箱に収められた阿弥陀如来。「そうめん如来」などと言ったらバチが当たりそう。



唯一現存する不動坂口の女人堂です。歩き始めて1時間、ここで高野山の途中でかった柿の葉寿司をランチにいただきます。

高野山で女人堂ができるきっかけとなったのが鎌倉時代中頃の小杉という女性。継母に騙され父親から両手首を切られて山に捨てられた小杉は、熊に育てられ、やがて人間と結婚して子供を設けるが、再び継母に見つかって子供は殺された

小杉は亡き子供の冥福を祈って女人禁制の高野山の入り口であるここに参篭所を建てたそうです。

しかしなんという悲惨な物語でしょうか。



再び山の中を歩きます。ここは谷上(たにがみ)女人堂跡。くりかえしになりますが、残存する女人堂は不動坂口女人堂のみ。



地図で見るとこのあたりです。ここから弁天岳(985m)への登りです。



弁天岳へのそれなりの登り坂なのでがんばる奥さん。男よりも女のほうが苦労してお参りしていたことになります



高野山はスギ、ヒノキなど針葉樹が多いです。これは自生のマツ



弁天岳(985m)到着。残念ながらあまり景色はありません。



弁天岳から南へ下ったところにある大門口の女人堂跡。ここから大門までの坂には令和4年に寄進された鳥居がありました。高野山で鳥居とは神仏習合です。

伏見稲荷も最初はこれくらいの鳥居の数だったのでしょう。



大門への坂で和歌山湾の景色が見える場所がありました。



大門に戻ってきました。スタートしてから2時間半です。このそばにあったのが龍神口女人堂。



女人道から根本大塔が見えます。女性参拝者はここで手を合わせたのでしょうか。



和歌山湾の向こうに淡路島らしき影が見えます。



いまこのあたりです。



相ノ浦口女人堂跡、大滝口女人堂跡を経て、小辺路(こへち)への分岐にやってきました。



「大滝から熊野本宮へ」と軽く書いてありますが、約55kmの長距離です。



吉野から熊野本宮大社に続く大峯奥駈道を数回にわけて歩いていますが、この小辺路も標高1000m級の山を4回登る手ごたえ十分の登山道です。

(田辺市熊野ツーリズムビューローより)



圓通律寺への参道の分岐点に来ました。高野山から少し離れたところの修行の拠点(別所)であったようです。

不許葷酒入山門」と書いてありますが、「葷酒」とは酒はもちろんのこと、ニラなどの臭いのキツイ野菜は修行の妨げになるので持ち込み禁止という意味だそうです。

そう言えばシンガポールでドリアン持ち込み禁止のホテルがあったなぁ。



圓通律寺の参道分岐はこのあたりです。ゴールの奥の院までもうちょっとです。



奥の院までのラストスパートが意外にアップダウンが多くて、がんばって歩く奥さん。



歩き始めて5時間弱。ようやく奥の院に到着しました。この先には非常に数多くの墓地群が並び、最後に弘法大師の御廟があります。

しかにこれだけ大型バスやらマイカーなどが往来するところが奥の院というのは矛盾しています。昔はひっそりとしていたとは思いますが。

ここで16時40分の京阪バスに再び乗車して京都駅に帰ります。京都駅に到着したのは夜の8時前でした。やはり高野山は遠いです。



2022年7月22日金曜日

【青森】奥入瀬渓流ハイキング(&十和田市現代美術館)

 (連日の雨で普段より水流の激しい奥入瀬渓流)


昨日、雨の中、八甲田山になんとか登れましたが、本日は奥入瀬渓流に沿った歩道をハイキングします。

青森県はまだ梅雨が続いていて今朝も雨です💧。しかしながら、今日もレインウェアを装着して強行します。

奥入瀬渓流は八甲田山の南に位置する十和田湖から流れ出る約15㎞の渓流をいい、国の特別名勝、天然記念物になっています。渓流は奥入瀬川に名を変え、東へと進路を変えて十和田市を通って太平洋へ流れ出ます。

十和田湖は八甲田山と同様に火山による噴火によってできたカルデラ湖で、標高400mの高さにあります。


これが旅館にあった奥入瀬渓流マップです。今回は右の焼山から左の十和田湖湖畔にある子ノ口(ねのくち)までの約15㎞をフルに歩きます。

ただ、見どころの滝などは後半に集まっているので、私のように意地になって全部歩くのでなければ、前半は歩かなくてもいいかなと思います。

累積標高約240m、距離15㎞、合計時間約4時間のハイキングでした。

交通ですが、JRバスが奥入瀬渓流沿いの国道102号線を走っているのでそれを利用するのがよいです。私はレンタカーを子ノ口に停めて、JRバスで焼山まで行ってから、焼山から子ノ口を歩きました。

この国道102号線は奥入瀬渓流の歩道のすぐ横を走っており、車に乗りながら滝を眺めるという横着な観光ができるようになっています。



11時21分の焼山のバス停で下車して歩き始めます。本当は一本前のバスに乗りたかったのですが7月30日からの運行でした。

これは星野リゾート奥入瀬渓流ホテル



ブナ林の中を抜けていきます。



連日の雨でかなり水量が増しています。



水流の模様が美しい。この先の石ヶ戸(いしげど)休憩所で持参したランチを食します。この石ヶ戸休憩所は軽食もできるし駐車場も充実しているので、ここから子ノ口までのハイキングで十分奥入瀬渓流を堪能できます。



石ヶ戸休憩所で一休みして再びレインウェアを着込んで歩きます。森の中に敷かれた板の歩道が絵になっています。



歩道とあまり高さが変わらないところに勢いよく沢が流れています。水が溢れないのは子ノ口にある水門で水位がコントロールされているからです。



ブナ林が美しい。



馬門岩。モアイの顔のように見える。



雲井の滝。高さ20m。このあたりから次々と滝が登場してきます。雨が降っていると歩きにくいですが、迫力のある滝が見れるのは良いこと。



こちらは白布の滝



これも良い写真。



これは九段の滝



渓流をまたぐ木道。



これが最後に出てくる奥入瀬渓谷最大の銚子の滝。この滝のせいで魚が十和田湖に遡ってこれず、十和田湖は長年魚のいない湖でした。



こちらはシャッタースピードを落としたバージョン。



子ノ口のそばの水門。ここで奥入瀬渓流の水位がコントロールされています。



ようやく子ノ口に戻ってきました。



観光船が浮かんでいる十和田湖。左奥にうっすらと見えるのが御倉山。



地図で見るとこんな感じです。こうして見ると火山爆発によるカルデラ湖らしい形をしています。



ゴアテックスが使われているモンベルの全天候型シューズも、昨日と今日と連続でぬかるみを歩きまくったせいですっかり水が浸み込んでしまいました

湖の水で靴の汚れを手で落としてレンタカーのヤリスに戻ります。なんとこのヤリス、新車でした。ホント、汚して申し訳ないです、トヨタレンタカーさん😌



再掲ですが、この後に泊まった、谷地温泉(やちおんせん)は酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)の近くにも関わらず、全くしょっぱくなく、約38度のぬるめのお湯で、しかも源泉が浴槽の下からポコポコと湧いてでてくる👀という新鮮さ。

いままで筆者のなかでの温泉ベストは乳頭温泉郷の黒湯温泉だったのですが、ぬるめの湯愛好者である筆者のハート💓を鷲づかみにされ、谷地温泉が温泉ベストになってしまいました。

(谷地温泉HPより)

青森4日目は飛行機搭乗まで時間があるので、十和田現代美術館を訪ねます。筆者の好きな名和晃平(なわこうへい)の特別展をしています。

この美術館は最近増えてきたカメラOKの美術館なのでRX1Rを持ち込んで好きなだけ撮影しました。

この名和晃平の作品は以前、銀座のエルメスで展示されているのを見ましたが、これは常設です。

名和晃平の作品に共通するのはクリーンな無機的感覚と、有機的感覚を融合させているところではないかと思います。



これが名和晃平の特別展の目玉作品。一つ一つのバブルがヌメヌメとふくらんでは消えます。アイデアも素晴らしいですが、常時運転できるような特殊な液体や素材などを探してきて実現する技術も驚きました。



その他、常設コレクションを撮影したものを掲載します。場所的に正直あまり期待していなかったのですが、いい意味で期待を裏切られました。アート好きな方は是非お勧めします。

スゥ・ドーホー(韓国)の作品。



トマス・サラセーノ(アルゼンチン)の作品。



塩田千春の作品。



ロン・ミュエク(オーストラリア)のハイパーリアリズム。4メートルの巨人



美術館の外にも無料で鑑賞できるオブジェがいくつかあります。これはドイツのインゲス・イデーというアート集団の作品です。



日本の現代アートの第一人者、奈良美智(よしとも)。タイトルが「夜露死苦ガール2012」。