2023年5月16日火曜日

武奈ヶ岳(ガリバー旅行村から)

5月13日に大津の仰木の里で田植えをしました。このあたりではもう大体田植えは終わっています。今年は長靴に工夫したので去年のように泥の中で長靴が脱げることもなく500株ほどの苗を植えましたが、やっぱり重労働です。一株でお茶碗半分くらいなので、約250杯のお米を植えたことになります。一石(いっこく)の1/3くらいかな。



田植えの筋肉痛が若干残る5月16日(火)、天気が晴れ予報だったので常々気になっていたガリバー旅行村から武奈ヶ岳へのルートにチャレンジします。

武奈ヶ岳は京都側の坊村から御殿山経由で登るのが最もポピュラーですが、今回は滋賀側、黄色で引いたルートになります。



比良山地の北側はV字型に切れ込んでいて、切れ込みの端に黒谷という地域があり、その先端にガリバー旅行村があります。湖西道路を北にすすんで勝野からさらに車で30分弱かかる距離です(黄色矢印)。

このあたりを車で走ると古くから集落があったように見えます。黒谷から朽木よりに行ったところには棚田百選に選ばれている畑の棚田があり、室町時代から続いていると言われています。



これが詳細ルートです。最初から地図を見て分かっていたことですが、ほとんどが沢道です。渡渉も多く歩きにくく景色も武奈ヶ岳頂上付近に至るまでほとんどありません。沢道好きでない限り、武奈ヶ岳へは坊村から登った方が断然楽しいです

特に注意を要する場所は大擂鉢の渡渉です。このあたり八ツ淵の滝という名所ですが、登山ルートとは別の沢ルートがあり死亡者多数との看板がありました筆者は登山ルートを歩きましたが、それでも一箇所厳しい難所がありました。クサリを使って慎重に足を運ぶ必要があります。

行動時間5時間50分、距離約10km、累積標高900mの山行でした。



ガリバー旅行村は子供連れの家族が自然に包まれて活動的に楽しめるレクリエーション施設になっていてキャンプ場も充実しています。

ガリバー旅行記は小人の世界に迷い込んだイギリス人の冒険談ですが、イギリスという国に対する痛烈な風刺作品であったようです。

そう言えば90年代に雑誌「Gulliver」ってありました。当時は「地球の歩き方」とか海外旅行が一種の冒険だったような気がします。今はどちらかと言えば、グルメとかリゾートなのかな。


ガリバー旅行村に入ると登山者用の駐車場があったので駐車します。一応入園料400円を払うように看板に書いてありましたが平日の早朝で誰もいないし、登山するだけなので結局払わずに済ませました。



園内は思ったより広く、建物も割と新しくて楽しそうな雰囲気。




武奈ヶ岳方面の景色。残念ながらここから武奈ヶ岳頂上は見えません。



自生の藤がきれいに咲いています。



しばらく歩くと登山道入り口です。ブナの種類の広葉樹が多く立ち並ぶ道。



八ヶ淵の滝周辺の注意書きの看板。



これが拡大図です。赤線が今回筆者が歩いた一般の登山ルートなのですが、別に沢沿いのルートがありドクロマークとともに死亡事故多発と書かれています。沢登りを趣味にする人には格好のスポットなのでしょうが、私は基本的に沢歩きはかなり嫌いです。



八ッ淵の滝の前に少し景色が開けた場所があり見下ろすと朽木へ向かう畑の棚田が見えました。日本棚田百選の一つで、室町時代から続く棚田だそうです。3日前に仰木の棚田で田植えをしたばかりなので親しみを感じます。


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ドクロルートに間違って行かないように所々看板があるので大丈夫です。沢登りの人はこの太いゴムロープを伝って向こうへ行くのでしょう。



ここが今回の旅一番の難所、大擂鉢です。左にすすむとドクロルート、右方向が一般登山ルートなのですが、一般登山ルートでも十分難所です。



昨日小雨が降ったので沢の流れはかなり急です。沢底は深くストックが使えません。慎重に一歩一歩どこに足を置くかを考えながら体を移動しました。



右下の象形文字のようなものは大正時代に滋賀県知事の書で「八徳」と書かれてあるそうです。八ッ淵に引っかけたものと思われますが、八徳とは「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」を意味する儒教の教えです。昔のテレビの里見八犬伝を思い出します。



八ッ淵の滝は名所だそうですが、沢歩きが嫌いな私は早く終わってほしいと思いながら進みます。




歩き始めて40分、ようやく沢歩き道から脱出。これはトウヤマツツジでしょうか。別名アザレア。ツツジは種類がありすぎて覚えきれません。



沢をはさんだ南西方向に釈迦ヶ岳(1060m)が見えます。



比較的ゆるやかな道をしばらく歩くと、広谷をはさんだ西方向に武奈ヶ岳の頂上が見えました。



広谷。ここからイブルキのコバ、八雲ケ原の方向に進みますが、細川越から武奈ヶ岳頂上へ向かうこともできそうです。



広谷からの別ルートが北側の矢印。こちらの方が釣瓶岳と武奈ヶ岳の間の尾根道を楽しめそうですが、そこに行くまでに長い沢道があるように見えます。もう沢道はお腹いっぱいなので行きません。



イブルキのコバ。コバとはちょっとした平面のことを意味しますが、あまりテント泊には向いてなさそう。ここから南へ向かう八雲ケ原方面のルートがあります。5年前に坊村から武奈ヶ岳に登った時は金糞峠まで下りてから八雲ケ原へ行ってテント泊をしました。



イブルキノコバ近くにあった折れた橋。歩いている時に折れなかったことを望みます。



イブルキのコバを過ぎると再び沢道です。あ~もうイヤだ。



沢道が終わって小山の分岐に出てきました。ここで坊村ルートと同流します。



尾根道にでると全く景色が変わります。武奈ヶ岳頂上が見えてきました。



今日はよく晴れていて蓬莱山と打見山のびわ湖テラスがよく見えます。



京都方面の山々です。ARヤマナビで調べてみました。


頂上までもうすぐ。



頂上にいた人に撮ってもらいました。5年ぶりの武奈ヶ岳頂上。登り始めて約3時間、11時に到着です。



比良山地最高峰だけあってびわ湖を見下ろす感覚が比良山地の他の場所とは違う気がします。




近江八幡と沖島。比良山から見ると沖島が陸続きのように見えます。



竹生島もよく見えます。



北方向に見える釣瓶岳(1098m)。こっち方面のルートは蛇谷ヶ峰まで続くのですが未踏破です。左に朽木方面と安曇川が見えます。



5年前もそうでしたが武奈ヶ岳頂上にはハエとアブが多い。そんな中で今回もカップヌードルリフィルでランチ。汗をかいたので、麺を食べた後の汁が特にウマい!



歩いてきた方向ですが樹々に覆われて道はわかりません。道中ほとんど景色がなかったわけで当たり前なのですが。



近江八幡、沖島方面にハゲたように見えるのが八雲ケ原です。約20年前には比良ロッジがあったのですが敷地跡だけがわかります。



素晴らしい天気のなかで景色を堪能した後、下山しました。坊村方面に帰るのは楽しいのですが、残念ながら再びあの沢道を戻ります

5年前もそうでしたが、武奈ヶ岳は頂上付近の開けたところが最高に気持ちよい山だと思います。下山に2時間強かけて駐車場に着いたのが14時でした。







2023年5月8日月曜日

【兵庫】氷ノ山ぶん回し

 2020年から世界を大混乱に陥れた新型コロナですが2023年のGW明けについに公式にII類からV類へ変更となりインフルエンザと同じ扱いとなりました。それでもまだ大多数の人たちは周囲の眼を気にしてマスクをしている状況です。

雨で終わったGWが終わり晴れ予報が出ている5月9日に前から行きたいと思っていた氷ノ山に行きました。

氷ノ山(1510m)は兵庫県と鳥取県の県境に位置する兵庫県最高峰の山です。このあたりは中国山地の東の端にあたり1000メートル超の兵庫県の名山がいくつかあってほとんど未踏破なのでこれから順次やっつけていきたいと思っています(三室山(1358m)、後山(1345m)など)。ちなみに鳥取県の最高峰は大山(1709m)です。

氷ノ山、那岐(なぎ)山、後(うしろ)山一帯は国定公園に指定されています。


氷ノ山にはいろいろなコースがありますが、今回は「ぶん回し」というハイカーの間では割と有名なロングコースを歩きます。

養父(やぶ)市の観光サイトより)


下図が詳細ルートです。上の公式サイトでは右回りになっていますが、私は左回りに歩きました。氷ノ山山頂を先にやっつけるか後にやっつけるかの違いです。私の場合、ちょうど12時に山頂に到着したのでランチを山頂で食べれてよかったです。

歩行距離約17km、6時間40分、累積標高約1100mでした。

小代越えで尾根に取り付いてからが好天に恵まれて氷ノ山やスキー場全体が見渡せる最高に気持ちの良い尾根道でした。この尾根道だけもう一度歩きたいです。

一方で氷ノ山を越えて神大ヒュッテを含む南半分はあまり景色は楽しめません。




丹波篠山のセカンドハウスから5時40分に出発して舞鶴自動車道から北近畿自動車道を走って福定(ふくさだ)親水公園駐車場に着いたのが7時40分。丹波篠山からでも2時間かかるのですね。兵庫県は大きい。

福定親水公園にはキャンプ場などがあり、ここから西へ行くと氷ノ山越えで尾根に取り付いて氷ノ山に向かうことができます。



駐車場から少し歩くと氷ノ山山頂が見えます。素晴らしい天気です。



氷ノ山鉢伏口バス停そばにあった「いせみち」の標識。「因幡国(鳥取県)若桜から氷ノ山越え、福定を経て伊勢へ続く道」と書いてありますが、ここから伊勢へはどういうルートで行ったのでしょうか?



「日本の街道 歴史を巡る」を見ると、西側からは京、大坂、堺から向かうルートが一般的であったようです。氷ノ山付近の街道は現在の国道9号線の山陰道で京へ向かうか、佐用から姫路へ進む智頭(ちず)街道、出雲街道のルートがあったので、その場合は姫路から舟に乗って大阪か堺へ向かったのかなと思います。

いずれにせよ、それほどまでに伊勢参りへの熱意があったのですね。



大久保のハチ高原スキー場の100mのゲレンデを登ります。ゲレンデ登りは単調で意外にしんどいので嫌いです。



ハチ高原駐車場に出ると広大な景色が広がります。



高丸山登山口へはスキー場のロッジが並ぶ平原です。5月の早朝なのでほとんど人を見かけません。ホテルやロッジはこの季節、学校や企業の教育研修などの用途に使われているようです。



高丸山登山口。120mほどのゆるやかな坂を登ります。



氷ノ山と反対方向を見ると鉢伏山(1221m)が見えます。ハチ高原駐車場からさらに大回りして鉢伏山を回ることもできますが、さらに1時間半ほど時間がかかります。「ぶん回しEX」といったところでしょうか。



尾根に取り付いてスキー場のロッジを見下ろす。



左奥に氷ノ山山頂が見えます。もう標高差は500mを切っています。



こちらは氷ノ山国際スキー場のロッジ群。



とにかく素晴らしい天気と景色に恵まれて、この上なく気持ちの良い標高1000mの尾根歩きです。iPhoneでダイアナ・クラールをかけて歩きました。iPhone 14 Proはスピーカーの音質も相当上がっていて驚きです。



ジャジーな気分の尾根歩きが終わり大平頭(1171m)までの150mの急坂を登り切ります。なかなかキツかった。



大平頭避難小屋。



氷ノ山が近づいてきました。



布滝頭付近にはブナの木がたくさんあります。このあたりは西日本唯一の亜寒帯性気候になっているそうで、ブナの木が多かったり東北登山に通じるものがあります。



布滝頭(1264m)。



後ろを振り返り鉢伏山方面。



転落危険箇所。先週の大峯奥駈道と比べれば大したことはありません。



氷ノ山越えの避難小屋です。スタート地点の福定親水公園駐車場からここに接続する最短コースもあります。不動滝、布滝などが楽しめるコースのようです。



 山頂の小屋がはっきり見えます。あと標高差200mほど。



仙谷分岐。南西の若桜(さ)方面へ向かうルートと合流しますが、このルートは現在崩落で閉鎖されています。最初に見た「いせみち」はこのルートのことです。



頂上9合目手前の岩場。巻き道があるので大峯奥駈道みたいにクサリで這い上がるようなことはしなくてもOK。左奥に見えるのが「こしき岩」と名のついた巨大な岩塊。間違ってこしき岩アタックルートに行ってしまって引き返す。



転がった丸太の陰にひっそりと咲いていたのがショウジョウバカマ。今年最後の見納めでしょう。



9合目からがキツかったけれど、ようやく頂上に到着。ちょうどお昼12時です。登山開始から4時間20分かかりました。



避難小屋の中はとてもきれいに使われています。



これは日本海側の景色。扇ノ山(1310m)も見えているんだろうな。どれかはわかりませんが。



こちらは南側の景色。小屋があるのは宍粟(しそう)市へ向かうルートです。3.5㎞ほど先の登山口で2021年の年末に遭難事故がありました。最大級の大雪警報が出ている時に軽装の4人が車で林道につっこんでいったらしい。

悪環境の中シェルターのなかで過ごすのを快感に感じるのは人間の本能なのでしょうか。降りしきる雪の山小屋のペチカの前で燃え上がる愛、なんて映画でよくあるシーンですが。



山頂は広々としています。カップヌードリフィルを食べる。カップヌードルリフィルは登山食には大変便利なのですが、賞味期限が6カ月しかありません。まだ7個もあるのでドンドン登山をしなければ。



下山しはじめて20分ぐらいで神大ヒュッテに到着。氷ノ山山頂から南側のルートはあまり景色もなく、ここもウッドデッキがあっていい感じですが、あまり長居するような所ではなさそうです。



一ノ谷の水場。湧き水ではないので生で飲むのに若干不安が。鹿はいなさそうですが。



一ノ谷休憩所のあたりはトウダンツツジの群生地になっています。ツツジは今が季節ですが、標高が高いのでまだ蕾が堅い。



東尾根避難小屋へ向かう道のブナ林。



東尾根避難小屋。標高1000mです。避難小屋がとても多いのはそれだけ吹雪などに見まわれることが多いのでしょう。




東尾根避難小屋からの100mは急坂です。右回りのぶん回しはここが一番キツイ箇所かもしれません。



東尾根の登山口に下りてきました。標高788m。



東尾根登山口そばにある逆水(さかみず)自然公園。見えているのは炊事場できれいに並んでいる蛇口をひねると水が出ます。こういう公共設備が普通に使えるのが日本が大変素晴らしいところだと思います。



トイレも大変きれいです。



氷ノ山国際スキー場のロッジ。コーヒーでも飲もうかなと思ったけれど開店休業っぽかった。東尾根登山口から30分ほど歩いて14時半に福定親水公園駐車場に到着、待っていたスイフト号に乗って丹波篠山のセカンドハウスに帰宅しました。

「ぶん回し」は苦行の旅かなと思っていましたが、全くの正反対で最高に気持ちの良いハイキングでした