2020年10月1日木曜日

岩手山

 5年間務めた会社をリタイアしての一週間の東北旅行。黒湯温泉と乳頭山登山を楽しんだ前半に続き、後半は八幡平のふけの湯と岩手山登山です。


乳頭温泉郷から盛岡まで46号線を走ります。山の中をぶち抜いたような道路で楽しめるドライブです。

まずは盛岡市が一望できる岩山公園の展望台に行きます。盛岡は初めてですが、一望してみると小ぶりな都市であることがわかります。人口で言えば、30万人弱なので大津市よりもちょっと少ないくらい。

その盛岡市を手を広げたように見守っているのが、翌日に登る岩手山。二千メートル級の大きな山です。


壁のように巨大に見えるので、果たして本当に登れるのか?と正直、ビビります。

でも、結論から言いますと、そこそこ体力があれば、登山の初心者でも十分登れる山でした。いろんなルートがあるので、あくまで私の登った上坊コースに限っての話ですが。


公園にあった石川啄木像。残念ながら石川啄木の著には接したことがありません。盛岡にいたのは21歳までで、そこから北海道に行き、詩作に励むなか、社会主義運動などに関わり、なんと26歳にして肺病で亡くなってしまった。

あらためて銅像を見てみると、若いのだけれどなんとなく老成していて、しかも肝が据わった感も感じられます。


次に岩手銀行へ。赤レンガ館と呼ばれている建物は、東京駅を設計した辰野金吾。
明治の終わりに竣工し、2012年まで岩手銀行の営業を続けていました。


内部は吹き抜けになっていて、品の良さを感じます。


すぐ前にあった銅像とセットで。我ながら良い構図です。


岩手県出身の知り合いに教えてもらった、盛楼閣の冷麺。乳頭温泉郷から八幡平に行く前に盛岡に寄ったのも実はこれが目当てでした。

人気店で平日にも関わらず数名の待ちでしたが、待っただけのことはあります。なにより麺がツヤツヤで美味しい。

盛岡名物が冷麺だということは知りませんでした。なんと地元の京都にも盛岡冷麺の店が何店かあります。

調べてみると発祥は北朝鮮出身の在日朝鮮人、楊龍哲が故郷の冷麺を盛岡で売り出したことが発端だそうです。本場の冷麺は蕎麦粉を使っているのですが、盛岡冷麺の特徴は、パスタと同じように圧力で麺を穴から押し出す製法にあるようで、道理で麺が美味しかったはずです。


どこの駐車場に停めたかわからなくなりかけるというアクシデントを乗り越え、目当ての盛岡冷麺を食した後は、八幡平に向かいます。

盛岡からすぐに東北縦貫に乗って八幡平ICで降りて、そこからアスピーラインで八幡平まで行けるのですが、このアスピーライン、かなりのカーブの連続で、レンタカーのヤリス君のナビが、いちいち、「この先カーブがあります」を連発してくれます。

山頂レストハウスの展望台で再び明日お手合わせを願う岩木山に対面します。

盛岡の岩山公園から見た岩手山の反対側ですが、こりゃ登るのは大変だなぁと、再度ビビります




これが実際に歩いたヤマレコルートですが、八幡平から見た、左下のふもとにある上坊神社から登って行き、尾根に取りついてから斜め上に頂上を目指すルートです。

山と高原地図と遠くに見える岩手山を見比べながら明日の自分の動きをイメージします。


岩手山には多くの登山ルートがあり、今回私が辿るのは上坊コースで一番のショートカット。馬返し登山口からの柳沢コースもショートカットですが、八幡平から近い上坊コースにしました。



さて、旅の後半の宿である蒸ノ湯温泉(ふけのゆ)に到着しました。小学校の校舎のようです。こちらも黒湯温泉ほどではないですが、人気の宿です。


宿の受付のそばに神社があり、巨大な男根が祀られています。
なにやら怪しげな感じですが、女将さんが、とてもしっかりした方で、従業員のみなさんも親切です。


部屋は黒湯温泉と比べれば広く、くつろいだ気分になります。


部屋には、蒸ノ湯温泉を舞台にした、つげ義春の漫画がありました。漫画ではオンドル小屋として、地熱で温まる方式が描かれています。岩盤浴のようなもの。
いまでも設備はあるようですが、営業はしていませんでした。


露天風呂は宿から歩いて3分ほどの場所にあります。iPhone Xで撮影。


まずは、あたり一面が温泉が吹き上げている姿に圧倒されます。黒湯温泉よりもずっと大きいです。以前行った恐山を彷彿させます。


こちらは男女別の露天風呂。





こちらは混浴の湯。混浴の方が広くて、箱型の湯舟や、写真のような樽型の湯舟などいろいろあります。お湯の色は乳白色で、黒湯温泉と同じですが、味はこちらの湯は金属臭がします。湯については黒湯温泉のほうがまろやかで私好みですが、野趣、解放感で言えば、蒸ノ湯に軍配があがります。

この混浴に入る女性はかなり勇気がいるかと思います。もはや恥ずかしがるようなレベルではない。

こちらの料理も山菜を主にしたものですが、味付けが素晴らしく、毎晩が楽しみでした。


7時頃から登山を開始したいので、5時半に起床し、岩手山に車を走らせます。八幡平にある蒸ノ湯から岩手山までアスピーラインで一時間弱かかります。


ゴジラの背びれのようなシルエットが見えてきます。


上坊神社への道は車のナビにも、Google Mapにも乗っておらず自動車専用道路である整備されたアスピーラインから突然小さな道にはいります。

正しくは上坊神社への道の横に、登山口に向かう道があったのですが、間違って上坊神社への細い道に車を入れてしまい、細いでこぼこ道の林道に入り込んでしまいました。

行きは、後輪が空転して進めなくなりかけ、帰りは、車体が激しく傾き転倒するかという場面がありましたが、なんとかヤリス君、仕事をこなしてくれました。

上坊神社への道は、ジムニーのような四駆以外は絶対におススメできません。

しかし、ヤリスって変な名前、誰がつけたのでしょう。


平日の朝の7時、誰もいない薄暗い神社はなんとなく気味が悪い。


二本の灯篭の間を進みます。妖怪でも出てきそうな雰囲気。


こちらが、本来アスピーラインから入るべきルートでした。


駐車場もちゃんとありました。先客さんが一台。ちょっとホッとします。


上坊コースの最初の目的地はツルハシ分かれで、そこまで800mの高低差をひたすら登ります。


ショートカットの登山道なので岩場、ハシゴ、ロープを覚悟していましたが、ほとんど全くなく、歩きやすい道でした。



随分歩いた気がしましたが、「二合目」と書いた石碑が倒れています。ちょっと、ため息が出ます。


全体に薄暗く、外の景色は何も見えません。でもなんだか癒されるものはあります。


石碑があったので、三合目まで来たか、と思いきや、「二合目五夕目」。励まされるというよりは、むしろ、言わないでくれ、という気持ちになる。

ちなみに、山の高さを「合」で表しますが、その下の単位が「夕(セキ)」で表すのは初めてみました。


最近特に気になっているのがキノコです。アワタケかなぁ。キノコの種類は調べるのが難しい。


キノコに癒されてようやく三合目。


ようやくツルハシの別れに到着。ここで1500m。四合目の標識は見なかったけれど、どうも二合目、三合目の標識は低く書きすぎていた気がします。何か基準が違っているのかもしれません。

ここまでくれば、やれるぞ!という気になってくる。


次なる目標は1750m付近の避難小屋。だんだん楽しい気分になってきます。



突然景色が開け、頂上が見える。どうやらあまり険しくはなさそう。


頂上のきれいなお椀の形とは違う、とげとげしい岩場が見えます。


ルートで言うと避難小屋の手前ですが、屏風尾根といわれる部分の岩肌だと思われます。頂上から西の斜面は、大地獄谷やら、鬼ケ城など、恐ろしい名前が付いています。こちらのルートのほうが変化に富んでいて楽しいでしょう。日帰りは少しきつそうですが。


GoogleEarthで見ると西側斜面がバックリと削れている形がよくわかります。地質学的には、バックリ削れている西岩手火山がオリジナルの山頂のカルデラで、東の岩手山の山頂は、その後に出来た寄生火山と呼ばれるものだそう。

寄生火山とは火山の山服の割れ目から噴火した火口のことを言いますが、岩手山の場合、寄生火山の方が高くなって偉そうにしているといったところです。


それでは寄生火山の山頂めがけて進みます。


かなり立派な避難小屋です。奥に見えるのが屏風尾根。


あと250mほどで頂上。登りやすいので気分が上がります。


西岩手山の外輪部。



大地獄谷が眼下に見えます。御釜湖と呼ばれる小さな火口湖。七滝コースを辿れば御釜湖に立ち寄ることができます。


かわいいイワギキョウ。北海道から中部で見られる高山植物。


御釜湖を中心にした外輪部の全体が見渡せました。


ついに頂上の火口の縁に到着。


下を見ると巨大にえぐれた火口が見えます。ここまで来ないと絶対に見れない景色です。
火口といってもそんなに深くなく、走って降りていけるくらいの深さです。
それでも岩手山は、活火山で噴火警戒レベル1とされています。

噴火警戒レベル1とは、「一応、これ、活火山やで」というレベルなのでそんなに心配しなくてもよく最後に噴火(小噴火)したのが1919年だそう。


Google Earthで見る河口部。この縁を一周します。


あいにく頂上はガスに覆われていてほぼ景色は全く見れず、ところどころに石仏が設置されているのが見えるだけ。


この世のものとは思えないような景色がガスの中に浮かび上がり、神秘的です。


ようやく最高点に到達しました。ガスっていて風も強く寒いのですが、敢えてバーナーで湯を沸かして味噌汁を作ります。こういうのも訓練の一つ。


元気な若者グループがやってきてワイワイ楽しそうに足も軽く進んでいきました。
寒いし見えないし、火口の縁だし、石仏あるしで、一人で歩くには結構さみしい道でした。

モンベル美郷店で手袋を購入しておいて本当によかったです。手袋をしてもまだ寒かった。


まるで冥土の旅をしているような気になります。


寂寞とした火口の景色。


ここを降りると不動平で南側ルートになります。若者たちは元気に下っていきました。


やった、ついに一周しました。


山頂部分から降りるとガスもなく気温も上がります。一方、頂上のガスは濃くなっていっているよう。



下りの道までガスってきました。



下山届をポストにいれて、ついに岩手山登山完了。達成感を味わいます。


乳頭山でも見かけたオオヤマリンドウ。


翌朝、とても天気が良かったので眺めが良いと書いてあった茶臼山麓の展望台に行きましたが、やっぱり岩手山の山頂はガスに覆われていました。


眼下の熊沼が美しい。


アップです。道もない原野風景が素晴らしい。近くに行ってみたい。










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