2024年10月5日土曜日

【滋賀】太神山(たなかみやま)

今年は9月後半になっても最高気温が30度を下回らず、地球温暖化が一線を超えたなと思いました。

地球って大気圏外の温度は1000度もあるんですよね。地表で0度だとか30度だとか言っているのは微妙なゆらぎみたいなもので実に繊細なものです。

さて、今回は滋賀県の湖南にある太神山(たなかみやま)(599m)に登ります。この山には6年前に登ったのですが、石山寺駅からミホミュージアムまで歩く途中にたまたまあったから登っただけで、今回は歴史ガイドの奥さんと一緒にじっくり味わって登ってみたいと思います。

これが全体のルートです。田上枝公園の無料駐車場に停車して川沿いの舗装道路を歩き、全体の行程の半分ほどの場所から尾根に取り付く岩場の道を登って頂上へ行って引き返すという流れです。頂上には現在修理中ですが立派な三井寺の末寺である太神不動寺があり、巨石と坂にもたれかかるような造りは見ものです。

全体の行程ですが、距離約13km、累積標高520m、時間は5時間ちょっとの山行でした。全体的になだらかな坂になっていて岩場もありますがとても登りやすい山です。


田上(たなかみ)枝公園駐車場に車をとめます。広い無料の駐車場です。ここから太神山登山口まで3,4台程度停められるスペースがいくつかありますが、ここに停めておくのが無難でしょう。

「田上」も「太神」も「タナカミ」と読みますが、漢字が来る前は田んぼの神であり山の神だったのでしょう。



全行程の約半分は太神川沿いの舗装道路です。筆者は沢沿いの登山道が嫌いなので舗装道路になっているのは有難いです。

先週あたりから彼岸花が咲き始めました。今年は猛暑のせいで開花が遅かったような気がします。



公園横を抜けたところにある湖南アルプス登山道の全体図。右上(北東)には何度も登っている金勝(こんぜ)アルプスがありますが、このあたり一帯を三上・田上・信楽県立自然公園と名付けて保護しているようです。三上山はこの地図には載っていませんが、さらに北西に位置します。

6年前はこの手前に美味しいミートパイのお店があって食べたのですが、閉店してしまっていました。



この巨大構造物も6年前にはありませんでしたが、新名神高速道路の橋梁工事です。高層ビル数十棟分くらいの凄まじい建設規模です。鹿島建設が手がけているようですが、日本は建設会社が儲かるように出来ています。



NEXCO西日本の新名神の計画図です。大津JCTから東はすでに供用されていて、すでに登山で何度か使っていますが、城陽から大津JCTまでは2024年度中に開通を予定していたところ、地盤の問題で延期になったそうです。いつ開通予定なのかは公式発表はなさそう。



迎不動のお堂。太神山の各所にはお不動さんが祀られています。これは不動明王の厳しさに山岳修行の修験者たちが引き付けられるからです。

でもここのお不動さんは少し柔和な感じがします。そもそも、お迎えして下さるわけで優しいお不動さんです。



一般車が入れないゲートを過ぎると、松茸採集への警告が。10月1日からなのですでに採集期間に入っています。不法入山には金10万円と書いてありますが、松茸の値段からすれば安すぎるような気もします。

この太神山はかつて良質なヒノキの古木が大量に生えていたのを建築資材として伐採の限りを尽くしました。荘厳な寺院群のために既に奈良時代には禿山になってしまい、おかげで土砂崩れが頻発するようになったため、あわてて松を植えまくったそうです。

特にアカマツは土砂崩れを防止に適していて、やせ地に向いているので花崗岩質の山肌にちょうどよかったのでしょう。

その結果、松茸が生えてきたというわけです。また、禿山になったせいで花崗岩が露出して、それを登りに平安時代の役行者の時代から修験者が集まってきたのでしょう。



「たなかみふどうみち」の石碑。優しくてかわいい。



太神川を越えるといよいよ尾根にとりつく登山道が始まります。



今回は奥さんと一緒に登っています。尾根までは岩場が続きますが、クサリもハシゴもなく普通に登れます。金勝アルプスもそうですが、湖南アルプス全体が花崗岩質で、硬くてもろいので、巨岩ゴロゴロといった山容になります




新名神の工事現場が見える。あそこから登ってきました。



巨石を切り通してあります。頂上に立派な不動寺があるのでお参りしやすいように出来るだけ登山道を整備したのでしょう。



途中で見かけたクリ。



途中にあった地蔵堂でコーヒー休憩。ガランガランの紐(鈴緒)の先にある木(桐枠)に「禿頭寺」と書いてあるのが面白い。よっぽど伐採されまくってハゲてたんでしょうねぇ。



巨石の前に屋根もないのに神棚が置かれています。山の神様を大切にする心が今でも続いています。



泣き不動。泣きそうな顔をしているお不動さんです。最初の迎え不動も柔和な感じでしたが、こちらも厳しさよりも優しさを感じます。

そもそも不動明王は大日如来の化身と言われていて、憤怒の形相は煩悩を断ち切るためで、本当は迷える者たちを導こうという慈悲の心を持たれているのです



不動寺の山門が出てきました。



山門には2体の像があるので二尊門とも言われています。ガイドの奥さんの解説によると、この二人は不動明王の付き人をしている子供だそうです。

二人の名前は矜羯羅童子(こんがらどうじ)と、制多伽童子(せいたかどうじ)で、こちらの杖を持っている方が、制多伽童子のようです。制多伽童子は憤怒の表情をしていることが多いそうですが、こちらの童子は杖に持たれて一休み。参拝客を「ふむふむ」と眺めて品定めをしているようにも見えます。



こちらは、矜羯羅童子(こんがらどうじ)。合掌している手にはさんでいるのは独鈷杵(とっこしょ)と言われる法具。笑っていてユーモラスでさえあります。



山門の内は聖域なので樹木は伐採されずに樹齢数百年かと思われるほどの太い幹が並びます。



途中でチラリと見えた琵琶湖。太神山は頂上でも景色がないので琵琶湖が見えたのはここだけ。



不動寺の境内に出てきました。ちょうど先月9月末に真言密教の護摩の法要が行われたようです。



不動寺の本堂はちょうど令和の大修理中で足場に覆われています。巨岩を土台にしたような急な坂に建っているのがわかります。



工事中の本堂を見ながら石段を登って行きます。説明によると総工事費は約1億5千万円ですが、ほとんどは公的補助金で賄われていて、お寺の負担は約1千万円。最高3百万円寄進された方の札が並んでいたので無事、檀家さんの寄進でやりくりできたのでしょう。



ちなみにこの写真は6年前に来たときに写したもの。清水寺のような懸け造りになっているのがわかります。写真を見る限りそんなに古びているようには見えませんが、約50年前に修理して以来、台風などで問題が生じていたように書いてあります。



一応、本堂のなかでお参りできるようになっていますが、真っ暗です。当然、ご本尊のお不動さんは見えません。秘仏のご本尊は三井寺の開祖である智証大師がご自分で彫られたそうで、時々開帳されているようです。

これだけの大規模な修理ができるのは、このお寺が重要文化財であるだけでなく、やはり三井寺の末寺であることが大きいのでしょう。大きな傘の下にいると何かと得をするものです。



上から見ると鉄パイプの足場の間から新しい檜皮屋根がはっきりと見えます。おそらくこの山で育った檜の皮を使っているのでしょう。



本堂からすこし上がったところが頂上の三角点です。

6年前は不動寺の境内に戻って北から反時計回りにミホミュージアムまで歩いたのですが、今回は頂上を踏んで、来た道を引き返しました。




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