梅雨だというのに35度に至る異常気象が続いた2025年6月ですが、八ヶ岳に登ることにします。
日本アルプス系の山々は大変すぎるのと遠いのと人が多すぎるので敬遠していましたが、その天界の神秘性には魅力を感じます。
改めて場所を整理してみました。八ヶ岳と南アルプスは諏訪湖と富士山を結ぶ回廊を左右に挟んだような配置になっています。フォッサマグナのシワですね。
八ヶ岳は連峰になっていて、どれとどれが8座になるのかというのは特にないようです。夏沢峠を境にして北八ヶ岳(左半分)と南八ヶ岳(右半分)に分かれていて、日本百名山は南八ヶ岳のことを指すそうです。なかでもビッグボス的存在は最高峰の赤岳(2899m)で、実際見てみると特別存在感が際立っています。
筆者が今回登るのは、図のなかの天狗岳、根石岳と中山で全て北八ヶ岳に属します。
八ヶ岳はかつての火山帯であり、南八ヶ岳のほうが活動時期が古いので浸食が進んで険しい山容になっているそうです。天狗岳は北八ヶ岳グループですが十分険しかったのですが、中山にいくと確かに相対的に険しさは減少しているように思えました。
これは旅館にあった手ぬぐい。
これが全体のルートマップです。唐沢鉱泉温泉で前泊したのですが、唐沢鉱泉温泉は宿泊客には茅野駅からの送迎サービスが付いています。
唐沢鉱泉から西天狗岳への最短コースを進み、今回の旅の最高峰である西天狗岳、そしてすぐ隣の東天狗岳を踏んだあとで、八ヶ岳連峰のピークの一つの根石岳に往復します。
そこからさらにもう一つのピークである中山に向かって尾根沿いを進み、中山を踏んだ後で黒百合ヒュッテで宿泊し、翌朝に再び唐沢鉱泉へ下山するといったコースです。
本当は1日目をもう少し楽にして、2日目をもっと歩きたかったのですが、2日目の天気が曇りから雨にかわる予報だったので、結果、1日目をせいっぱい歩いて、2日目は下山するだけにしました。
- 1日目 山行6.5時間、10km、累積標高1200m
- 2日目 山行2.5時間、4km、累積標高30m(下山のみ)
累積標高1200mは筆者にとっては一大事なのですが、加えて登山道はガレ場のオンパレード。自分でRock Hopperと名付けていましたが、この険しさが輪をかけて大変でした。しかし、景色の素晴らしさは投資対効果を十分感じさせるものでした。
唐沢鉱泉を起点とした案内図がありました。筆者は根石岳、中山にも立ち寄りましたが、東天狗岳、中山峠を通ってぐるりと一周する日帰りコースを多くの人は歩くようです。
京都から新幹線で名古屋まで行き、そこから特急しなの号で塩尻、そこから中央本線で茅野(ちの)駅で下車しました。13時に唐沢鉱泉旅館のマイクロバスが迎えに来てくれたので、バスに乗ること約40分で唐沢鉱泉旅館に到着。家を出てから5時間かかりました。やはり八ヶ岳は遠い。
茅野駅では暑かったのですが、さすがにここは標高1850mなので涼しいです。
部屋は狭いですが悪くありません。トイレは共同です。これで朝夕の食事がついて1万8千円。40分の送迎バスがついていることを考えれば高くはありません。
食堂は広々としています。食堂だけでなく館内にはドライフラワーが飾られています。ここの女将さんはとても人柄の良い方で旅の良い思い出になりました。
夕食はこんな感じ。
自慢の鉱泉は冷泉を温めたものです。手前に出ているのが源泉です。泉質は中性で無色透明ですが、鉄分の味がしました。
翌日、朝食は最早で7時、登山口の宿だから6時くらいにしてくれても良かったと思いますが、7時半から行動開始です。
つづら折りを250mほど登って尾根に取り付きます。
唐沢鉱泉分岐の尾根にたどり着きました。ここで約2100m。すでに息があがっています。
2416mの第1展望所に来くると突然天界の景色が広がるので思わず声が出る。
硫黄岳から編笠(あみがさ)山まで南八ヶ岳のほぼ全てが見渡せます。
中でも一番目立っているのは八ヶ岳のビッグボス、赤岳(2899m)です。赤く見えるのは酸化鉄を多く含む岩肌のせい。
編笠山をさらに右の南方向に転じると
南アルプスが一望できます。3193mの北岳が目立ちます。登ってみたいなぁ。

北岳、甲斐駒、仙丈ヶ岳のアップ。

さらも右に南西方向は
中央アルプス(木曽山脈)が一望できます。恵那山、空木(うつき)岳、木曽駒。木曽駒の右に奥まっているのが御嶽山。
中央アルプスのアップ。御嶽山は中山道歩きのときに何度も遥拝しました。
今回の旅のあちこちで見かけたのが可憐なイワカガミ。
第1展望所はこんな場所ですが、上の写真は第1展望所の少し下で撮影しました。中央アルプスは下の場所のほうが良く見えたような気がします。
西天狗岳が見えました。
西天狗岳をよく見るとガレ場の道が上に続いています。イヤな感じです。
そうなんです。標高100mのガレ場をよじ登らなければ西天狗岳の頂上は踏めません。少し泣きそうになりましたが、注意しながら少しずつ登ります。今回の全ルートでこの箇所が一番辛かったです。
西天狗岳(2646m)の頂上にたどり着いて記念写真。10時20分なので登山開始から3時間弱かかりました。
今日の天気予報は晴れのち曇りで風が強めなので「てんきとくらす」では登山指数Cでしたが、そんな予報がウソのような素晴らしい天気。

左下の根石岳から時計回りに、硫黄岳、赤岳、阿弥陀岳。権現岳は隠れていますが、奥には編笠山がチョコっと見えます。
その奥には、南アルプスの北岳、甲斐駒、仙丈ヶ岳の三兄弟がくっきり見えます。
ちょうど硫黄岳や赤岳の後ろに富士山がいるのですが、ビッグボスたちのほうが背が高いので見えません。Google Earthで天狗岳の上空に視座をあげると富士山がいました。ドローンを300mくらい上空に飛ばせば見えるんだろうな。
次に踏むのが東天狗岳。頂上の左にある巨大な岩塊は「天狗の鼻」と言われています。
西天狗と東天狗岳の間の鞍部は比較的歩きやすい。頂上に何人かの人々が見えます。
東天狗岳(2640m)でも記念写真。
東天狗岳から隣の根石岳に寄り道することにします。天狗岳頂上には無かったのに、強風が吹いて73kgの筆者でも2度ほどよろめきました。
今日は元々風が強い予報だったのですが、この場所は普段でもいつも風が強いそうです。
強風根石岳との間の鞍部は遠くから見ると岩場がなくて歩きやすそうですが、白く砕けたザレ場になっていて楽をさせてはくれません。
根石岳途中の鞍部。この白いのは石灰岩かな。ここから南東方向へ下ったところに本沢温泉があり、日本最高峰の野天風呂だそう。泉質はカルシウム、マグネシウムと書いてあるのでやはりこのあたりは石灰質なのだろう。
ちなみに野天風呂と露天風呂の違いは両方とも屋外だけれど野天風呂は壁すらない風呂。
11時15分に根石岳に到着。意外に天狗岳が遠くに見える。
ここからさらに南へ行くと南八ヶ岳の境界である夏沢峠に向かいますが、手前に根石岳山荘がある。上から見ると倉庫みたいに見えますが、右斜面側に窓があります。
ここはブルーベリーソースのプリンが名物で、そばに湧き水があり、お風呂も焚いているらしい。往復20分ほどですが、まだまだ歩かなければいけないし、風もキツイので天狗岳の方へ戻ることにします。
左に阿弥陀岳(2805m)が見えています。
東天狗岳に戻って北の中山峠の方向へ進みます。右の巨大な岩塊「天狗の鼻」の脇を抜けていきます。このルートは右側が岩塊の連続なので滑落すると大変そうです。
途中にあったイワカガミの群生。
途中で2路に分かれます。どっちを通っても黒百合ヒュッテに行けます。筆者は右の(東の)ルートを歩きましたが、筆者のルートの方が幾分早く黒百合ヒュッテに行けるようです。
この尾根道は右が岩塊になっていて眺望は良いハズなのですが、12時前あたりからガスが西から渡ってきました。天気予報通りです。ガスの前に天狗岳に登れて本当にラッキーでした。
ナナカマドの花。赤い粒になるやつです。
今回のコースは基本的にRock Hopperなんですが、時々、こうした湿原っぽい場所が出てきます。
12時半になっていて風もないし気持ちの良い場所なのでカップヌードルタイムにします。
気持ちの良い湿原だと思っていると再びロック、ロック...。この先に見えるのは中山。やはり北八ヶ岳は南八ヶ岳に比べて優しい山容です。
中山峠に到着。東天狗岳から200mも降下したことになります。右の岩だらけの場所を抜けて行くと中山で、左の板じきの道をすすむと黒百合ヒュッテです。
筆者は中山も踏みますので岩だらけを行きます。
巨大な岩塊の右向こう、北東方向に八千穂(やちほ)高原が見えます。
左に行くと中山、右にいくとニュウ。女性のおっぱい(乳)に似ているからという説がある2352mの山。北八ヶ岳より少し東にずれているので富士山が見えるそうです。
筆者は中山方面へ進みます。
板じきのラクな道だと安心していると...
やっぱりロック、ロック...
13時前に中山(2496m)に到着。残念ながら真っ白です。
岩の上をホッピングしながら展望所らしき場所に来ました。ヤマナビで見てみると、中央アルプス、御嶽山などがずらりと並ぶそうです。
天狗岳手前の展望所で見れたので文句はいいません。
さて、今日、踏むところは全部踏んだので、あとは黒百合ヒュッテに帰ってビール、ビールと考えながら歩いていて、スマホでチェックすると、なんと!!!完全に逆方向の丸山方面へ歩いていました。丸山まで2割くらい歩いてしまいました。
再び丸山に戻って、中山峠に戻ったのが14時半でした。
中山峠から黒百合ヒュッテまでは板じきの道で約5分。楽勝です。
ようやく黒百合ヒュッテに到着。何はともあれかけつけビール一杯がうまい。ジョッキで飲めればもっと良かったけど贅沢は言いません。
後で調べてみると6月末から7月初めまでの間にクロユリが見れると書いてあったのですが、近辺で咲いていたのかも知れません。実際は濃い赤紫色のようです。

ヒュッテ内部の様子。若いスタッフさんたちで活気があります。ハンガーがなければ都会のカフェみたいな写真。
奥にはピアノが置いてあり、ちょうど昨日と一昨日にピアノコンサートがあったようです。
トイレは随分お金をかけたそうで、清潔でにおいもなく快適でした。
今回は個室(小)が予約できました。清潔なロフト、といったところ。夕食まで数時間あったので持参したヘリノックスチェアが活躍してくれました。読んだ本はラヴェルの伝記。
大部屋だと16時半まで布団に寝転がせてもらえないようで、少し高いですが個室はありがたいです。
17時半に夕食。ハンバーグのソースは2種類あって、山小屋でできる精一杯工夫した料理が美味しいかったです。筆者を含めて5人の泊り客が一つのテーブルを囲んで食事をしましたが、関東から来た八ヶ岳リピーターらしき夫妻2組で話についていけません。
それとひとり者の筆者だけが個室なので少々気がひけました。
ちなみに黒百合ヒュッテの名物はビーフシチューで1800円。食べませんでしたが。
夕食のあとはヒマな時間が流れます。Docomoは電波が入ったそうですが、筆者のAUは全く入りません。
本を読んだり、ダウンロードしていた音楽を聴いたり、ダラーっとしたり、外をブラブラしたり...
朝食は5時半からですが、天気が崩れることがわかっているので筆者が5時前にトイレに降りていったら、みなさんすでにパッキングをされていました。みなさん、今日はめいめいのルートで下山だけのようです。
朝食を終えて6時には黒百合ヒュッテを出発しました。黒百合ヒュッテから唐沢鉱泉までは540mの下りだけなので楽勝なのですが、レインウェアを装着して、いつ雨が降りださないかと不安です。
途中で唐沢鉱泉と渋の湯に向かう道の分岐があります。渋の湯は唐沢鉱泉旅館よりも少しひなびた所のようで、その分料金も安い。
岩場もありましたが、苔むした場所が神秘的で印象的でした。
スギゴケ。
ツガの若葉。
唐沢鉱泉旅館の近くまで下りてきて表示板があったのでナメ滝に立ち寄りましたが、まぁ別にどうってことない沢でした。
8時半に唐沢鉱泉旅館に到着。一昨日の宿泊とは別に日帰りプランの利用で、温泉、昼食、マイクロバスが含まれています。このあとすぐに雨が降り始めました。筆者は雨の前に下山できてラッキーでした。
月曜日ということもありお客さんも少なく温泉にゆったりと入ることができました。11時の昼食は蕎麦やカレーライスなど選べますが、牛丼をチョイス。これが美味しかった。ビールはやっぱりジョッキがうまい。
女将さんがデコレーションしたドライフラワー。このあと再び温泉に入り、12時のマイクロバスで茅野駅に到着、途中、田沢駅で大雨で特急しなのが運転見合わせとなり塩尻駅で足止めを食らいましたがなんとか無事帰りました。