2022年6月13日月曜日

【滋賀】リトル比良

(地上と音楽のやり取りしたオーム岩から琵琶湖を眺める)


 関東と九州に続きいよいよ近畿も梅雨入り間近になりました。日曜日は3時間テニスの練習をして疲れがとれていないのですが、火曜日から天気が崩れるというので、本日月曜日に登山に向かいます。

今回目指す目的地はリトル比良と言われるところで、蓬莱山、武奈ヶ岳と続く比良山地から高島方面へ分岐したような山地です。近江最古の大社である白髭神社の背にそびえる山々でもあります。


こちらが詳細ルートです。近江高島駅から出発し長谷寺(大炊神社)まで一般道を歩き、白坂、岳山、オーム岩と岩盤や巨石群を抜けていきます。鳥越峰からダウンアップを2回やって最高地点の滝山に到達、下山は渡渉地帯とガレ場地帯を抜けていくといったとても変化の多いコースです。

累積標高959m、合計距離13.4kmで、休憩入れてやや速め(ヤマレコ0.8~0.9)に歩いて約6時間の山行です。

リトル比良というプリティ💗な名前に騙されないように💥してください。危なさを感じる箇所ことはありませんが、岩場、ガレ場、渡渉のオンパレードで、なにより倒木が多いうえ、道が細くて左右から木の枝が張り出して歩きにくい。木の幹に頭を3回ぶつけてしまいました。

坊村から武奈ヶ岳の往復のほうがまだラクだと思います。


地質学的にはちょうどこのあたりが花崗岩で形成されており、硬いけれども割れやすい性格が、岩盤や巨石、ガレ場が生まれる要因となっています。大神山や金勝アルプスあたりも花崗岩なので同じような山様です。



今回は久しぶりの電車で登山です。近江高島駅に9時前に到着、しばらく美しい水に育てられている田んぼを見ながら一般道を15分ほど歩いたら、隣り合っている長谷寺と大炊神社(おおいじんじゃ)に出てきます。明治の神仏分離令までは一つだったのでしょう。

山から切り出した巨大な花崗岩の石燈が目を引きます。



大炊神社からすぐにフェンスが出てきます。この林道の付近は音羽と呼ばれていて古墳群があるそうです。もともと高島を含む近江一帯は応神天皇の家系が力を持っていた場所であり、正統の武烈天皇に後継の子供がいなかったため、血のつながりの薄い応神天皇系列の継体天皇に第26代天皇に就く依頼がきました。



右の登山道は、「嶽詣道」と書いてあります。「嶽」とはこの先にある岳山のこと。



賽の河原。


砂防ダムの建設中。



シダに挟まれた岩盤のくぼみを登ります。


むき出しの花崗岩の上に立つ石燈。




白坂に到達。あまりになめらかに風化したので土も積もらず、岩盤がむきだしになっています。登山道は白坂の横を行きます。



白坂から先は参道の趣があります。


弁慶の切り石。


今回のコースには虎ロープが何度か登場しますが、ほとんど使わなくても登れます。


目の前に見える尾根道は、近江高島駅に戻る周回ルートです。



今回のコースでは何度も目にした野生のユリ。テッポウユリという品種で沖縄や奄美諸島が原種で本州へ広がったそうです。

登山をしていると色々な花に出会いますが、ユリのような立派な花を見るのはめったにないのでちょっと感動。優雅で気品のある香りがまた素晴らしい。


登山開始から約2時間で岳山に到着。


岩屋観音が祀られています。


再び虎ロープのある岩場の下り。



今回のルートでは丸い葉のツルをよく見かけましたが、調べるとサルトリイバラ。よく見ると確かにトゲがあり、これに猿が引っかかるので「猿取り」の名が付いた。別名、山帰来(さんきらい)とも言い、赤い実は解毒作用がある。

今度歩きたい鯖街道にある宿の名前も山帰来だった。



サツキとツツジの見分けは難しいですが、6月半ば近くだし小さめだし、葉の先が少し尖っているのでおそらくサツキでしょう。



リトル比良での一番の名所であるオーム岩は、ややもすれば見落としてしまいそうになる。修験者が好きそうな突き出した巨石で、リトル比良のコースで開けた眺望があるのはココだけ



少しつま先を外に出して撮るとコワさが引き立ちます。実際にコワイけど。



北東方向で琵琶湖にポツンと浮かんでいるのが竹生島。



東の方向には左に伊吹山。えぐれた石灰岩の岩肌がわかる。東海道をはさんだ右手には霊仙山が見えます。霊仙山の手前、琵琶湖にポチっと埃が落ちているように見えるのが多景島(たけしま)。彦根から一日一便が出ているようです。


オーム岩の入り口に立てかけてあった看板。風化して分かりずらいけれど、「鴻溝録(こうこうろく)」と書いてあり、調べてみると大溝(高島)藩士の前田梅園が領民から見聞したことをまとめた書籍のようです。大津図書館にあるようなので今度読んでみよう。

これを読むと、オーム岩の上に立った人が、はるか遠くの人と管弦と歌で呼び合った様子が書かれています。「~の覗き」のような修験道の場とは全く違う、優雅な趣があります。

お互いに音楽を音楽で返すということから鸚鵡(オウム)岩と言われたのです。

やはり古代渡来人から継体天皇を経て近江の高い文化性が存在していることを感じさせます。

同じような地形だけれど、そこに住む人によってとらえ方が大きく変わるのですね。



オーム岩を過ぎたところで今度はピンク色のユリが。調べるとこれはササユリ。ヤマユリというのはよく聞きますが、花びらの内側に赤いドットがちりばめている派手なユリです。



コアジサイもよく見かけました。アジサイのもっとも派手な部分は花ではなくガク(装飾花)であり、コアジサイはガクのない花だけのシンプルバージョンのアジサイ。



鳥越峰。すでに2時間半。リトル比良という名前と違い、意外に険しい道なので結構バテていますが、まだまだ半分も来ていません。見張山の方にいくと近江高島駅への周回ルートになりますが、岩砂利山方向へ進みます。

その前にBigカップヌードルシーフードで腹ごしらえ。



地図で見るとココです。


鳥越峰から岩砂利山までは100m下って100m登るという道のり。いきなり巨石の間を降下します。


壁のように立ちはだかる巨石の脇を抜けていきます。このあたりは先月5月の大峯奥駈道を思い出しました。




岩阿沙利山に到達。「沙」が「砂」だったりしますが、元は仏教の阿闍梨が語源で、そこに砂利道の砂利が混ざってしまったものと思われます。

さて、ここから正念場です。この岩阿沙利山から130m下って鵜川越え。そこから170m登って滝山です。


道が狭くて左右の枝や茎にあたって歩きにくい上に倒木が多い。筆者は木の下を潜るのが大嫌いなので極力乗り越えるのだが、余計に体力を使う。




鵜川越えは舗装された林道になっていました。林道を少し下がったところから再び登山道が続きます。


鵜川越えから少し登ったところで、白い線香花火のような花を見つけました。シライトソウ(白糸草)という風雅な名前。日本と韓国に分布する種だそうです。


アップしてみました。



鵜川越えから滝山までは歩きやすい道でした。正確には滝山頂上はまだちょっと上ですが、このあたりから帰りの北小松駅の電車の時刻を気にして足を速めます。なにせ一時間に一本しかないので逃すとやることがない。



ここから寒風峠までも歩きやすい道です。あとは下りだけなので気もラクになりポンポン下って行きます。



寒風峠に到着。この下が涼峠なので、この谷道はよく風が通るのでしょう。残念ながら本日のこの時間には無風でした。



寒風峠の場所です。ここからさら尾根をあがるとヤケ山に行きます。4年前に武奈ヶ岳に登った際は、八雲ヶ原でテント泊をした後、釈迦岳を通って、ヤケオ山、ヤケ山経由で下山しました(4年前の記事)。



鵜川越えまでの難路がウソのような歩きやすい道なので電車に間に合うよう速足で進みます。


これで余裕に15時25分の電車に間に合うと思っていたら、オトシ出会の手前から沢登場。まぁ、谷なので当然といえば当然なのですが。



渡渉が続きます。この墓石のような石に降りて沢を渡ります。



涼峠に到着。無風なので特に涼しさはなし。看板にあるのは昔の柴刈り唄です。このあたりは里山として村人たちに活用されていたことが偲ばれます。背中に載せるだけ一杯の柴を刈った後、ここで涼しい風にあたって一休みしたのでしょうね。



里山の往来のために、おそらく人為的に工事したと思われる切り通し。



渡渉がなくなったと思いホッとしていたら今度はガレ場です。昔の人は草鞋でこのガレ場を行き来するのはさぞかし大変だったでしょう。 


ここから楊梅の滝への案内があります。雄滝、雌滝があり雄滝は滋賀県で一番落差の大きい滝です。4年前はこの滝に立ち寄ったのですが、危険を感じるくらいの難所でした。垂直の鉄バシゴもあります。

今回は立ち寄らずに先を急ぎます。



湖面がかなり近づいてきました。


登山口に近づくと休憩所があります。おそらく滝が見えるのでしょうが立ち寄らずに進みます。



この橋の先が登山口です。



比良げんき村を通りすぎて、後ろを見ると、鳥越峰から見張り山に至る尾根道が見えます。登山口から北小松駅までの時間がヤマレコでかなり多めに見積もられていたので、北小松駅にはかなり余裕で到着しました。

湖西線の新快速は近江舞子駅までは各駅停車です。今年2022年3月のダイヤ改正までは一時間2本だったのが1本になってしまいました。JR発足時に逆戻りだと言われていますが、それでも乗ってみるとガラガラです。

また開通時期未定ですが新大阪と敦賀が北陸新幹線でつながる予定もあり、ますます湖西線は寂しくなりそうです。




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