2020年4月25日土曜日

清水寺と建仁寺の牡丹

新型コロナウィルスで緊急事態宣言状態下の京都ですが、洛中住まいですので、徒歩圏内での「散歩」という位置づけで、普段観光客だらけで近寄らない清水寺に行くことにしました。

朝9時前出発で、鴨川沿いを歩くと、光にきらめく川面に菜の花が色を添えます。


人が少ないので悠然としているアオサギ。ややこしいのですが、アオサギは頭が黒くて、くちばしが黄色。



中華料理屋さんのレトロな壁面が青空に映えます。


寺町通には、ハナミズキの花が咲いています。


ハナミズキは、北アメリカが原産で、日本がソメイヨシノをアメリカに贈った際に交換にもらったものだそうです。アメリカ人にとっては、ハナミズキを春の象徴としているようです。でも英語では Dogwood。なんで犬の花?


松原通りも、お店はすべて閉じており、閑散としています。おもてを掃除していたおばあさんが、「お店は閉まってますけど、清水寺は空いてますよ」と教えてくれました。


これは2017年に六波羅蜜寺と清水寺を訪れた時の写真です。今もしこんな状態になると、即座にクラスター発生です。



仁王門と三重塔。


清水寺の後ろにあるのは、清水山です。優しいお椀型の形が美しいです。

清水寺の山号は、音羽山。でも、音羽山というと大津の山を言うのが一般的ですが、清水山の別称も、音羽山なのです。ややこしいですね。


月の札の山は清水山ではないかと勝手に思っています。


平安京遷都以前から存在するお寺の数少ない一つですで、賢心という僧が夢のお告げで、清らかな水を求めてたどり着き、庵を結んだのが発端で、その後、賢心を訪ねた坂之上田村麻呂が建立し、その後、征夷大将軍となって蝦夷を征伐したという話になっています。

境内図です。今回もこのおススメルートで歩きます。


仁王門下の階段は、普段は、人混みのせいで撮影禁止なのですが、今日は特別。


随求堂(ずいぐどう)。


西門。西にある極楽浄土への入り口です。ここから、愛宕山が見えます。


アップしてみました。比叡山にゴツンとやられたというタンコブがわかります。


本堂は、何度も消失した後、江戸時代の初め、1633年に再建されたものです。

普段観光客で埋め尽くされている清水の舞台なのに誰もいません。マスクと手袋をしたスタッフが、お堂をしきりに雑巾がけしています。
いつも重さにチャレンジする錫杖も、今日はビニールでくるまれて、触れないようになっています。

江戸時代に本当に清水の舞台から飛び降りたのが235件で生存率85%だそうです。でもなんで飛び降りたのでしょうか。


清水寺ホームページより、ご本尊の十一面千手観音。オリジナルは焼失で、鎌倉時代の作だそうです。


拡大図。頭の上に、さらに二段の観音様が。一番上の観音様を千手の手が支えているのが面白い。



地主神社。お寺としての清水寺を守る役割である鎮守社(ちんじゅしゃ)。なぜか、縁結びの神様になっていて、普段は若い女子でいっぱいです。

色のコンビネーションがとても美しい今回のベストショットです。


屋根は四方に面のある寄棟造り(よせむねづくり)が、二面屋根の入母屋造り(いりもやづくり)の上に乗っかっている複雑な構造になっています。しかも、寄棟造りの端がカーブを描いています。表面はヒノキをつかった檜皮葺(ひわだぶき)。


檜皮葺は、2017年2月から3年がかりで葺き替えたものが、今回ようやく完了。新しい屋根で、ひときわ美しい。


139本のケヤキの柱で構築された日本を代表する懸けづくり


愛宕山や西山を背景に京の街並みと一緒に。


ぐるりと回って下に降りていきます。


寺の名前の元となっている音羽の滝。



懸けづくりを下から眺めます。


石垣の草抜きの作業員の人たち。ロッククライマーなら、趣味と実益を兼ねられて、仕事が楽しいでしょうね。


鴨ものんびり。


八重桜。牡丹桜ともいいます。


帰りに仁王門横の善光寺堂を除きました。


観音様の変化仏の一つである如意輪観音をお祀りしています(写真はネットより)。



帰りは松原通りから、産寧坂を下ります。三年坂ともいう。


湯豆腐屋さんにしだれかかる枝垂桜。桜の花はないですが、新緑がまぶしい。


こんな、誰もいない産寧坂をもう見ることはないでしょう。というか、コロナ騒動のようなことは二度とゴメンです。



八坂の塔と言われる法観寺の五重塔。




さて、牡丹を鑑賞するために西に歩いて建仁寺に来ました。

お茶の葉を、茶摘みの20日前頃から、日光を制限することで、渋み成分のカテキンに比べて甘味成分のテアニンが多く出ます。覆っていない周りにもお茶の木が、生垣として植わっています。


建仁寺の牡丹です。ベルベットのカクテルドレスのようなゴージャスさです。「百花の王」と言われるだけのことはあります。

この季節にしか見れない贅沢です。





2020年4月4日土曜日

峰床山

皆子山(971m)に次いで京都府2番目に標高の高い山が峰床山(みねとこやま)(970m)です。
ちなみに、三位が三国岳(959m)で続いて、地蔵山(948m)。

愛宕山、比叡山よりも北にある、いわゆる京都北山は色々登りましたが、結論から言うと峰床山は自分の中ではベストと言ってよい山でした。他の山と植生が異なり、ミズナラ、ブナ、クリの木が多く、樹木の間が広いので、見晴らしがよくて歩くのが楽しいのが要因かなと思います。

コースですが、坊村駐車場から左回りにまずは鎌倉山(950m)を目指し、オグロ坂峠から峰床山を往復し、八丁平の東側を下って、沢沿いの道の後は林道になります。


坊村から西を向いた3Dルートです。前半(右側)は尾根沿いが多く、これも楽しいルートの一因でしょう。


【余談】ちなみに、今(4/4)は新型コロナウィルスが世界で猛威を振るっており、東京都で緊急事態宣言がいつ出るか?といった状況です。前夜に円山公園に夜桜を見に行ったら、iPhoneで偶然、水彩画調の写真がとれました。加工してません。


桜咲く、金曜日夜の八坂神社。誰もいません。こんな事態を誰が予想したでしょう。



閑話休題、今は土曜日の朝8時半。坊村駐車場は広いのですが7割方埋まっています。峰床山ではほとんど誰とも会わなかったので、みんな比良山の方に行かれたのでしょう。


少し歩くと、水神社。横に水場があります。水神を祀る神社で全国に多くあるようですが、初めて見ました。


古民家が比良山をバックに。いい写真です。


登山口にあった手書き感満載の案内図。鎌倉山までのルートです。


少し平坦な道のあとモミジ坂への案内。


急坂というほどではない。


「城の鼻」。調べたけど由来は分からず...


ここから尾根道です。


イワウチワ(岩団扇)。日本の固有種で、珍しい花のようです。


馬酔木と書いてアセビと読む。


馬が葉を食べると酔ったようにふらつくことから、この名前になっていますが、動物も賢いので、アセビの葉は食べません。逆にアセビが多く見られるということは、他の植物がシカなどの食害に遭っているということを意味するようです。


とつぜん廃道が出てきます。ガードレールにカーブミラーまであります。


峰床山で一番よく見る樹は、ミズナラです。ブナと似ていますが、ブナはもっと高地に生えていて、ミズナラは明るい場所を好むそうです。何よりの違いはナラにはドングリができるところ。近い種類にコナラがありますが、これは葉っぱの違いで見分ける(ミズナラの葉が濃くてギザギザがきつい)

いわゆるオーク樽のオークはナラのことですが、国産のミズナラを使ったミズナラ樽が一部のジャパニーズウィスキーに使われているようです。当初はミズナラ樽は木の香りがきつくて評価されていなかったのが、創意工夫されるうちに、独自の良さが認められるようになってきたとのこと。


「ぶな平」にでてきました。テントを張りたくなるような、平面で気持ちのよい場所です。


イワウチワのつぼみ。花弁の色が濃い。


確かに団扇のような丸い形の葉。赤い葉が多く見られるのはなぜでしょう。


鎌倉山(950m)に到達。


記念写真。


オグロ坂峠に向けて進みます。


千年杉。


確かに立派な杉ですが、いままでいろんな杉の大木を見てきたので、千年は少し誇大な推定かな、と思います。本当に千年以上だったらスミマセン。


ミズナラの中を下っていきます。


向こうに峰床山の影が見えてきました。


オグロ坂峠にやってきました。祠で手を合わせるI氏。今回はオグロ坂峠を直交に東から西へ進みますが、この道は、鯖街道でも一番の近道である山道、針畑越えの際に通る道です。


これが針畑越えのオグロ坂峠あたりのマップです。針畑越えは必ず行ってみたいルートなのですが、テント泊を2泊しなければならないので、なかなか機会がありません。


オグロ坂峠の案内版です。


峰床山に向けて登坂です。


Tシャツで少し寒いくらいがちょうど気持ちよい。



このミズナラ、クリの樹々に沿った尾根沿いの道が素晴らしい。


新しく設置された案内板。


峰床山が近くなってきました。



このあたり、ところどころに石灰岩が散らばっている。


ようやく峰床山頂上にやってきた。



頂上は広く、テントを張るととても気持ちよさそう。


ARヤマナビで皆子山をサーチ。


どうやらこの木の右にあるのが京都府最高峰の皆子山(971m)。峰床山は1メートル低いだけ。


エースコックのワンタン麺を食べて、ミズナラの中を引き返します。


さて、ここから八丁平に向けて下ります。



八丁平に近づくと湿原っぽくなってきました。


かなり本格的な鉄柵が施されています。たくさんミズナラが生えているのに何故ここだけ?と思って調べると、守っているのは地面に生えている緑のイヌツゲのようです。

家屋の垣根に使われることが多いイヌツゲですが、そこまで生育するまでの間にシカに食べられてしまうのを防いでいるようです。


これはブナかな。


八丁平は、近畿では珍しい高層湿原で、南側の硬いチャートが浸食を防いでダムのような役割を果たしているようです。これから沢沿いを歩くのですが、その沢の名前である江賀谷川の水源がこの湿原です。


ニッカポッカがキマっているI氏。ちなみにニッカポッカとは、れっきとした英語の Knickerbockersが語源。野球やゴルフで使われていたのが、すっかり日本のとび職人のユニフォームとなりました。I氏の説明によれば、ももの両脇にあまった生地が擦れることで、風や物体を検知する意味があるとのこと。


八丁平の南端から中村方面の東に進むルートを行きます。


江賀谷川沿いを下っていくのですが、八丁平に溜まった水が流れているにしてはかなりの水量です。岩を覆うオオミズゴケがとても美しく、屋久島のような趣です。

今回のベストショットですかね。


オオミズゴケの感触を楽しむI氏。残念ながらオオミズゴケは個体数を急速に減らしているそうです。


これはクリの木でしょうか。


苔むした岩々を水流が伝っていきます。これも美しい写真。


調べるとどうやら、カントウミヤマカタバミという種類のようです。


帰りのルートは苔と沢が美しいのですが、渡渉が4,5箇所あります。しばらく雨もないのに水量は割と豊富なので、雨の後は避けた方がよいです。

注意深く進むN氏。


足元が狭い場所も多いです。やはり沢沿いはどこも簡単ではないです。


沢沿いの冒険が終わって整備された道にでたところ、まぐわうヒキガエルのカップルが。
他にも多くのヒキガエルが道の真ん中に、何をするわけでもなく佇んでおり、危うく踏みつぶすところでした。

普通は昆虫も爬虫類も、足音を察して逃げるのに、この鈍感さでよく生き延びてこれたものだと思いますが、これは、皮膚から毒を出すため、動物から食べられることがないからのようです。

でも踏みつぶされたらどうしようもない。。。


日本には、ニホンヒキガエルとアズマヒキガエルの二種類があり、見分け方は鼓膜の形です。

目から鼓膜の距離が鼓膜の直径より長い=ニホンヒキガエル
目から鼓膜の距離が鼓膜の直径より短い=アズマヒキガエル

ということなのですが、このカエル君達は、鼓膜の直径と距離がほぼ同じ。「アズマ」なので関東かと思いきや、島根が分界点らしいので、京都にアズマヒキガエルがいても不思議ではないです。


冬眠から覚めたメスのカエルはすでに体内に大量の卵を宿しており、正確には彼らは決して「交尾」をしているわけではなく、オスが上から抱きつくことで、メスを刺激して産卵させるための行動だそうです。メスが産卵したら、オスはその上に精子をかけます。

なので、交尾と言わず、「抱接」と言います。この行為は数時間から数週間も続くことがあるそうです。

面白いのは、オスが間違えて、オスの上に乗っかったときに、間違いを注意(解除)するための特別な鳴き声があるそうです。


江賀谷コースの入り口には数台分の駐車場があります。


あとはひたすら林道を歩き、国道367号に戻ります。蓬莱山方面の山が美しい。


安曇川と桜の花。ここから国道沿いを上がって駐車場でゴールです。