2019年3月21日木曜日

正伝寺、大将軍神社、神光院、西村家別邸

正伝寺(しょうでんじ)は、常照寺や源光庵よりもさらに北にある臨済宗の禅寺です。五山の送り火の船形の下あたりです。

東巌慧安(とうがんえあん)が鎌倉時代中期に創建しました。



ほとんど参拝客がいないので、林のなかの静かな空気を楽しめます。



境内に行く道とは別の竹林へ続く道があります。



嵐山のミニ版といったところ。



小堀遠州作といわれる枯山水庭園は、なんとぜいたくにも比叡山を借景にしています。


撮影していませんが、この前の廊下の天井は伏見城から持ってきたもので血の手形が残っている、いわゆる血天井。



内部は撮影禁止なのですが、狩野山楽の襖絵が有名です(正伝寺のサイトから)。
ただ正直暗くてよくわかりませんでした。



狩野山楽よりもずっと印象に残ったものが、経体大涅槃図と言われる、お経が綴られた線で描かれた釈迦入滅の絵です。江戸末期から大正時代の山崎弁栄(やまざきべんねい)という浄土宗の僧侶が描かれたものの複製ということですが、字を書きながら絵を描くという技術と、その集中力に強い宗教心を感じます。

ヤマザクラでしょうか。一本だけですがきれいに咲いています。




さて正伝寺をあとにして歩いていると、東海自然歩道のマップが。北に下になっているのでとても見にくい。尺八池から船山方面は以前歩きました



大将軍神社。西賀茂の産土神(うぶすながみ)で磐長姫(イワナガヒメ)他4柱を祀る。産土神とは鎮守ともいう土地の守護神。イワナガヒメは女神だが、ブサイクなので、アマテラスの孫のニニギから婚約を断られ親元に送り返されるというストーリーになっている。ニニギが結婚したかったのはイワナガヒメの妹のコノハナノサクヤヒメ。

本殿は外側の構造物によって守られている。屋根の造りは流造り(ながれづくり)といい、曲線で反った形で、しかも切妻造りと異なり、屋根の片方が長い。
葺き方は、こけら葺きといい、薄い木材を重ねている。非常に丁寧な仕事が見て取れます。





次に訪れたのが神光院(じんこういん)です。真言宗のお寺で、本尊は弘法大使。「霊光の照らした地に一宇を建立せよ」との神託を受けて建立したことから神光院の名前が付いている。


濃いピンク色の梅の花。


弘法大師がご本尊ということで、役行者と不動明王の像がさりげなく庭に置かれている。


神光院の後は西村家別邸を訪ねて鴨川の御園橋を渡ったところ、大規模な工事中。調べてみるとこの辺りは万年渋滞地区で、橋幅を二倍にするための橋梁付け替え工事だそう。

京都らしさが失われないか複雑な気持ち。


途中に寄った上賀茂神社。唯一咲いていた桜の名前が蜂須賀桜(ハチスカザクラ)。カンヒザクラとヤマザクラの自然交配雑種で、徳島城で生育していたところからその頃の藩主の蜂須賀氏の名前がついている。カンヒザクラとその種類については先日京都府立植物園でいろいろ見てきたのでご参考まで。



これは上賀茂神社にあった桐(キリ)の巨木。葉が落ちているので、ぱっと見、楡の木のように見えるが、落葉広葉樹で葉っぱは朝顔のようなハート型をしている。湿気を通さないので高級木材として箪笥や琴などに使われている。


さて上賀茂神社のこのあたり一帯は、神官たちの屋敷となっており、社家(しゃけ)と呼ばれます。神官職は世襲制で江戸時代は200戸もあった。

前に流れる川は明神川。賀茂川の少し北から取水された川が、御生所川(みあれどころ)、御手洗川と名を変えて、社の敷地を通り再び賀茂川に戻る。この明神側は賀茂川に戻る手前の支流です。もともとは賀茂氏が農業用の水路として作った川ではないかとも言われています。

ちなみに、鴨川は出町柳あたりで、賀茂川と高野川に名前を変えます。



たちならぶ社家の前にあった大きな椋木(ムクノキ)。前回京都府立植物園でも見ましたがエノキとの見分けのつけ方が、葉っぱを見るしかないということで、この状態では無理。



社家の一つ、西村家別邸が一般公開されているので入ってみます。平安時代から続く歴代社家を明治時代に西村家が所有しました。


屋敷というほどの大きさはありませんが、明神川から導水している大きなお庭があります。



家屋から見た庭の姿。無鄰菴を彷彿させます。規模と趣向については無鄰菴のほうがはるかに格上ですが。


写真に写ってはいませんが左手前に禊のための窪んだ場所があります。3月になると身を清めるという古来からの習慣がありました。

また、手前の小川は、ぐるりと庭全体を周回しており、この小川を使って曲水の宴(きょくすいのえん)が行われていました。



曲水の宴のルールは、お酒のはいった杯が川を流れてくるので、自分の前に流れつく前て歌を詠み(短冊に書き)、お酒を飲み、皆が書き終わった後で、歌を品評して神様に奉納するというなんとも雅な遊びでした。


そのお酒を乗せるものを羽觴(うしょう)といい、こんな可愛らしいものでした。


西村家別邸の奥にはもう一つお庭があります。



説明していただいたご年配の男性はとてもおだやかで優しそうな方でした。


2019年3月17日日曜日

京都府立植物園

昨年12月に樹木ツアーに参加して以来、樹の名前が気になってしょうがないので、勉強もかねて京都府立植物園に行きました。

場所は、地下鉄烏丸線一本です。地図の通り、東へ折れる鴨川を、西へ折れる烏丸線がくぐり抜けたところにあります。北山駅を降りると真ん前なので、京都人にとっては、本格的な植物園がこんなに簡単にいけるわけで、本当に京都っていい町だなと感じます。



日本で最初の公立植物園で、24ヘクタール。シンガポール在住時代によくいっていたシンガポール植物園の約半分の大きさがあります。戦後は占領軍の住宅地になっていたそうです。



最初の木はクロガネモチです。


モチノキの見分け方は、葉っぱがプクっとしているところかな。秋には南天のような赤い実をたくさんつけます。3月で見ての通り常緑樹。


次はバクチノキ。初めて見ました(前に見たかもしれないけど名前がわからない)。
皮をむかれたみたいな樹皮が特徴ですが、絶えず10㎝ほどの樹皮がはがれ落ちるところが、「衣をはがされる」ことに例えて博打になっています。バクチノキというと、何やら博打に勝てそうな印象ですが、逆ですね。これも常緑樹。


これは馬酔木(アセビ)です。ツツジの種類ですが、葉に軽い毒があり、食べた馬が酔っぱらったようになることからこの名前がついています。常緑低木。


モミの木。クリスマスツリーに使われるので判別できる(かな?)。松の仲間です。常緑針葉樹。


テーダマツ。同じ松でも樹皮がゴロっとうろこ状になっているのが特徴です。



アラカシ。叩いてみるとやっぱり非常に硬い。ドングリは樫の実です。硬いから重量のある本体を支えるためか根に近い部分が非常にしっかりしています。根の部分が板状になって本体を支えているものを板根(バンコン)といいます。常緑広葉樹。



ヒノキは檜皮葺(ひわだぶき)として屋根などに使われたり、檜風呂のように建材にもつかわれます。古代は火をおこすのに使われたことから、ヒノキと言われるようになったそう。針葉樹。



桂(カツラ)。落葉樹なので枯れ木のように見えます。京都を代表する木です。



3月の半ばというのに桜が咲いています。椿寒桜(ツバキカンザクラ)。別名、初美人。
雑種の桜だそうですが、花期が長いので人気で各地に広がっているようです。



こちらもカンザクラの雑種で、修善寺寒桜。



寒緋桜(カンヒザクラ)。これはれっきとした原種。まだ満開ではないけれど、下向きに咲く姿が美しい。椿寒桜も修善寺桜もカンヒザクラのかけ合わせ。


オカメザクラ。これも元はカンヒザクラ。


青空をバックに。十分花見ができます。


唐橋(カラバシ)。中国原産のカラミザクラの派生。ほとんど見分けがつきませんが。


これが原種のカラミザクラ(唐実桜)。



さて、早咲きの桜を鑑賞したあと、温室に入ります。京都の植物園の温室というとちっちゃいイメージですが、なかなか立派なもんです。

入口に展示されていたのが、モンキーオーキッド。蘭の一種で、蘭にしては、とっても小さな花ですが、中をのぞくと、確かにモンキーの顔が。


ピンクの猫じゃらしみたいなのは、ベニヒモノキ。



アフェランドラ・シンクライリアナ。



ヴェルクレア・フェロックス。風車のような形が印象的。


温室内にいると、まるで東南アジアにいるような湿度を感じます。



ヒメフヨウはハイビスカスの仲間だそうですが、このヒメフヨウの種類は花が下を向くということで、ウナズキヒメフヨウという名前になっています。



イランイランの木。イランイランとはタガログ語で「花の中の花」という意味で、花から抽出する香水で有名だそうです。残念ながら花は咲いていませんでしたが、茎跡が目のように見えて面白い。



カカオの実がなっています。南米の高度300メートルあたりに育つそうです。



こちらはコーヒーの実。成熟に9カ月もかかる。世界のコーヒーの7-8割はアラビカ種で、こないだベトナムで飲んだコーヒーはロブスタ種といい味にクセがある。



屋根は開閉式になっていて、温度や湿度調節をしています。自動なのかな。なかなか本格的な施設です。



フクシア・ボリビアナ。アンデス山系の植物。繁殖力が強くハワイでは有害植物に指定されているそうです。



ベルトローニア・マクラタ。ブラジルやベネズエラの観葉植物。映画アバターの世界にでてきそうなミステリアスな花。



金鯱(キンシャチ)。スイカのような形が印象的で、よく売られているようですが、原種は火山岩だらけの切り立った場所にしか自生しないそうで、なんと絶滅危惧種だそうです。



バオバブの実。水分が豊富なだけでなく、ビタミンCもオレンジより多く、カルシウムも牛乳よりも多いそう。外見は短い毛がみっしりと生えていて気持ち悪い。
木の部分は撮影しませんでしたが、40メートル以上の大木になり、数千年の寿命をもつすごい木です。中に10トンもの水分を含むそうです。



ケストルム・ファスキクラツム。メキシコの常緑低木。


この花はメモを取るのを忘れたけど蘭の一種だったかな?



温室を出て外から撮影。こうしてみるとかなりの大きさであることがわかります。



ちなみにシンガポール在住時代に撮ったガーデンバイザベイの植物園の写真2枚。向こうに見えるのはマリーナ・ベイ・サンズ。やはりゴージャス感が全然違います。

まあ、京都はゴージャズ感を美徳としていないので、京都は京都ということで。




開園当初から植えられた樹齢100年に近いクスノキの並木道。常緑樹のクスノキの葉が風に揺られると波と同じ音がします。


川端康成の古都でも描かれているクスノキ並木。心を和ませてくれる不思議な力を感じます。



アキニレ。落葉高木。秋に花が咲くことから名前が付いています。ニレはケヤキの仲間なので枝ぶりが似ているけれど、枝分かれが左右非対称なところが違うようです。
ジグザグに枝が伸びているせいで、なんとなく不気味な印象のする木です。


楡(ニレ)の英語はElm。そういえばエルム街の悪夢なんて映画がありましたが、海外でも Elm Street というと不気味な印象なのでしょうね。



この二枚は椋木(ムクノキ)。落葉高木、エノキと同じバラ目アサ科で、正直どう見わけをつけるのかわかりません。調べてみると葉っぱの違いで見分けるしかないようで、ムクノキの葉は、側脈が葉縁に達するが、エノキはまるまって達しないという微妙な差のようです。葉っぱが落ちていたらどうしようもないですね。


エノキと言われれば、そうですか、と思ってしまう。



メタセコイア。落葉樹。カナダにいっぱい自生しているようなイメージがありましたが、実は化石としてしか残っておらず、絶滅したものと考えられていたところたまたま中国で自生が見つかったそうです。一方植林としては日本の気候にも合うので並木などで植えられているようです。まっすぐ三角形の形をした、子供のお絵かきに登場するような木。



最後はタケとバンブー。竹を英訳するとBambooですが、竹が地下茎を横に伸ばしながら増えるのに対して、バンブーは地下茎がほとんどなく、株が横並びに増えていく。

これはバンブー。根の部分が密集しています。確かにこれは「竹」ではないという感じがします。


やはり日本の竹、京都の竹はこうでないと、と思わせます。


ということで、京都府立植物園はまだまだいっぱい勉強できそうですが、見るのもブログを書くのも疲れてきたので今回はこのあたりにしておきます。