(一面に咲くキンコウカの湿原から見る八甲田大岳。この瞬間だけ青空になった😆)
約2年ぶりの東北登山です。東北の山は天上に位置する森とお花畑のようで心洗われるので大好きなのですが、今回は八甲田山に登ります。
合計3泊4日の旅で、八甲田山登山の翌日は十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流(おいらせけいりゅう)のハイキングを楽しむ予定です。
八甲田山は青森空港からレンタカーに乗って1時間弱のところにあります。前日にふもとにある名湯「酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)旅館」に泊まります。
八甲田山というと最初に思い浮かぶのが遭難事故です。これは明治35年に来るべきロシア(ソ連)との戦いに備えた雪中訓練だったのですが、不幸にして200名近くが死亡するという大惨事になってしまいました。その時の気温が零下41度。いまだに日本最低温度記録です。
(映画チラシより)
これが雪中訓練のルートですが、八甲田山の北側と十和田湖の南側をぐるりと周回する合計200km以上の行程で、雪中でなくてもかなりしんどいです。遭難した青森部隊は周回するまでもなく青森から田代付近で遭難してしまいました。
さて、前日に宿泊した酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)はヒバ千人風呂と言われる混浴風呂で有名です。さすがに千人はちょっと厳しいですが確かに巨大な浴槽です。泉質は強い酸性で、お湯を口に入れると相当しょっぱいです。放射線も含まれるらしくガンの治療に来られる方も多いようです。
ちょっと酸性が強烈すぎるのと、ぬる湯好きの私には熱すぎるので、ちょっとここは一回で充分かな、と思いました。
HPの写真には男女仲良くお湯に浸かっていますが、実際には男女が分けられています。
私が入浴している時は、女性の方は入ってきませんでした。
(酸ヶ湯温泉HPより)
八甲田山はこの場所の山の総称であり、「八甲田山」という名前の山があるわけではありませんが、最高峰は大岳(1585m)になります。
八甲田山の登山ルートですが、酸ヶ湯温泉旅館のそばの登山口から登って反時計回りで大岳に到達して一周するコースで行きます。
一番ラクに登れるコースは、左上のロープウェイ駅から一気に1300mまで上昇してから大岳に行って引き返すルートですが、ちょっとこれはチート💥すぎる。
最初に検討したのは、右下の谷地温泉(やちおんせん)から高田大岳を踏んで、小岳経由で大岳まで縦走するコースだったのですが、小岳と大岳の間の道がかなり荒れているらしく、やめにしました。
この他にも下にある櫛ヶ峰(くしがみね)を最高峰とする南八甲田に登るルートもあります。
この谷地温泉(やちおんせん)には3日目に宿泊したのですが、酸ヶ湯温泉の近くにも関わらず、全くしょっぱくなく、約38度のぬるめのお湯で、しかも源泉が浴槽の下からポコポコと湧いてでてくる👀という新鮮さ。
いままで筆者のなかでの温泉ベストは乳頭温泉郷の黒湯温泉だったのですが、ぬるめの湯愛好者である筆者のハート💓を鷲づかみにされ、谷地温泉が温泉ベストになってしまいました。
(谷地温泉HPより)
こちらが詳細ルートです。左下の酸ヶ湯温泉そばの登山口から反時計回りに周回します。地獄湯の沢の先までが沢ルートで、その先からは尾根沿いを歩き頂上の大岳(1585m)に進みます。
下山は避難小屋から左の毛無岱(けなしたい)分岐に直接進むのが一般的ですが、もっと歩きたいので右上の赤倉岳から宮様コース分岐を周ります。
毛無岱分岐からは湿原の上に敷かれた板の道で大変歩きやすいです。そして左下の城ヶ倉分岐経由で、酸ヶ湯温泉登山口に戻ります。
あいにく当日(7/21)は雨💦だったのですが、飛行機でわざわざ来ている手前、強行軍で登り始めました。
しかし、地獄沢を過ぎたあたりで沢の増水が激しく危険を感じて残念ながら諦めて引き返していたところ、幸運なことに登山ガイドの方に遭遇し、その方と一緒に再度大岳まで進んだことで無事予定ルートをこなすことができました。
登山ガイドの方には感謝の気持ちでいっぱいです❗❗
途中で引き返したのを含めて累積標高940m、距離約13kmで、行動時間は約7時間でした。
「遭難」というイメージが強い八甲田山ですが山容は優しく、出発地点がすでに標高900mですしルートも大変よく整備されており、雨が降っていなければ楽しい登山コースだと思います。
酸ヶ湯温泉に前泊した翌朝の7月21日は、「てんきとくらす」では登山指数Aだったにもかかわらず雨が降っていました。登山口そばの駐車場で小降りになるのを待ってから8時30分にレインジャケット装備で出発しました。
ここから写真は、iPhone X です。
しばらく沢を登って行くのでこんな感じのところを進んでいきます。
地獄湯の沢手前です。景色はほぼ何も見えない。
ここから本当は櫛ヶ峰(くしがみね)を頂点とする南八甲田連峰が見えるハズなのですが看板の後ろは真っ白。
地獄湯の沢です。硫化水素が立ち込めていて長居は危険です。雨水と硫黄の温泉がいっしょくたになって流れています。
この濁流をしばらく登ったのですが、さすがにこれ以上進むと危険だと感じて、非常に残念ですが引き返すことを決意しました。
動画をYouTubeにアップしたので掲載します。
諦めて元の道を引き返していた時に、同じく雨の中を登ってきた人に出会いました。話をしてみると登山ガイドの方で、雨による登山道の様子をチェックしに来られたそうです。
こんな状態ですが頂上まで行けるということなので、その方に付いていくと濁流の脇を進んで無事に沢を抜けることができました。
尾根道に入ると雨も一時的に止んで、さっきの濁流がウソのような美しい登山道がでてきました。ここが仙人岱(せんにんたい)。登山開始後2時間です。左にある井戸のようなものが八甲田清水です。
左がコバイケイソウ。右がイブキゼリモドキ。両種とも本州中部以北に見られる高山植物。イブキゼリモドキは伊吹山のセリに似てるからだそう。
iPhoneのカメラなんできれいに写らなくて残念。
コバイケイソウの群生。仙人岱から大岳までの間が一番美しい。まさに天上のお花畑。
イワカガミ。普通5月の花なのですが、オホーツク海気団からの風である「ヤマセ」の影響で八甲田の気温は低いため高山植物の時期がずれる。
八甲田山の遭難事故も、このヤマセがもたらした雪が原因の一つ。
桜沼。ここで標高1340m。
ヒナザクラ。東北でしか見られないそうです👀。サクラソウの一種です。
これは多分、白いヒメシャクナゲ。寒冷地の湿原に生息。
この可憐な白い花はヒメマイヅルソウ。葉っぱの形が舞鶴紋に似ているのが名前の由来。
いよいよ大岳山頂への道です。石を金網の中に入れているのを「ふとんかご」と呼びますが、登山道を守るために大変な労力がかかっています。
これが頂上手前の鏡沼。幻想的です。ガイドさんによるとサンショウウオが棲んでいるそうです。
これはアキノキリンソウ(秋の麒麟草)。
ついに頂上に到達。いったん諦めて引き返しただけあり感慨ひとしおです。登山開始4時間弱です。
頂上にあった山岳マップですが、景色は全く見えません。でも登れただけでも充分満足。
頂上から約30分のところに避難小屋があるので、酸ヶ湯温泉で作ってくれたお弁当をいただきます。
これが避難小屋。国定公園なので環境庁が建てたのでしょうか。かなり立派です。
雨が止んでいるので、ここから RX1Rで撮影。
後ろを振り返って避難小屋をバックに。
井戸岳に向かってよく整備された道を登って行きますが行先は真っ白です。
左下には井戸岳の巨大な火口がパックリと口を開けているはず。
地図上では今、井戸岳の東の縁沿いを歩いています。
下から接写。やはりRX1Rの写真はキレイです。
井戸岳(1550m)の山名標識です。登山開始後約3時間。
ハクサンシャクナゲ。珍しい高山植物が次々に見れて嬉しい。😃
赤倉岳(1548m)まできました。ようやく全行程の半分くらいです。
赤倉岳の神社。
赤倉岳分岐からロープウェイ駅方向へ進みます。
アオモリトドマツの間の道。
これはヤマハハコかな?つぼみなのでわかりにくい。ヤマハハコも北日本でしか見られない山地の野草。
宮様コース分岐から毛無岱分岐までの道はあまり利用者も多くなく、道が狭くて歩きにくい。雨のせいで靴がぬかるみにはまってドロドロに。
毛無岱分岐からは板が敷かれていて大変歩きやすい道に。
ここで雲が流れて青空が出てきました。
チングルマ。白い花が終わって、種のついた紅色の綿毛が出てきたところです。稚児の風車に似ていることが名前の由来。
振り返ると大岳の山容が見えます。ずっと真っ白だったので「あの山に登ったのか!」と今初めてわかります。
キンコウカ。北日本の高山の湿原でしか見られない珍しい花。今日は高山植物のオンパレード。
標高1000mの湿原。
キンコウカの黄色を見ながら板道を歩く。
この2枚が今回のベストショット。キンコウカの黄色が素晴らしい。大岳の頂上は見えそうで見えない😅
上毛無岱から下毛無岱に降りる階段から見た景色。これも素晴らしい。
湿原の上を板道が通っている。
ブナです。
途中からまた雨が降ってきましたが無事に酸ヶ湯温泉に到着しました。このあとは翌日の奥入瀬渓流ハイキングに備えて、「奥入瀬温泉 灯と楓」という宿に泊まりました。食事が美味しく、温泉もすっきりとしたお湯で大変快適でした。青森の地酒「田酒(でんしゅ)」もとても旨かった。
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