地図で場所を確認してみます。橿原神宮は畝傍山(うねびやま)を背にしており、耳成山(みみなしやま)と天香久山(あまのかぐやま)と大和三山と言われています。この三山に囲まれた場所に藤原京があり、持統天皇が遷都しましたが、694年~710年のたった16年間しか続かなかった短命の都です。
橿原神宮へは京都から近鉄特急で一時間で行けます。左下の第一鳥居から入って、拝殿でお参りしてから右上の登山口から畝傍山に登り、そのあと、地図には載っていませんが北側にある神武天皇陵に行きます。
さて第一鳥居ですが、アレ?この黄色のチンケな柱は?と驚きましたが、改修工事中だったのですね。それにしてもイマイチです。
表参道。両側に並ぶ巨木は、樫の樹。
前回樹木ツアーに行ってからついつい樹に見とれてしまいます。
外拝殿。広大な敷地のせいか、人々がまばらに見えます。今時どこにでもいる外国人観光客も誰もいません。
内拝殿。まだクリスマス前なのにもうすでに来年の干支である猪の絵馬が飾られています。屋根は立派ですが、木造建築が知恩院の三門のような棟梁の執念みたいなものを感じません。明治時代の建築だとこうなってしまうのでしょうか。訪問客がまばらなのもわかる気がします。
内拝殿。巨大です。今は中には入れませんでした。
さてここから畝傍山の登山口です。山といっても198メートルしかありませんが。
道は歩きやすいです。
なんと畝傍山、死火山だったのですね。ちょうどこのあたりが大陸プレートとフィリピン海プレートが薄く層になっていてマグマが隆起したのです。瀬戸内火山帯と呼ばれ、四国から九州まで帯状になっています。
畝傍山口神社は元々山頂にあったのが、橿原神宮が出来て、見下ろすのが良くないという理由で山の反対側に移されてしまいました。今回はそちら方向には行かず頂上に向かいます。標識には「畝火」と書いてあります。何か、うねうねと連なるイメージなのでしょう。語源はわかりません。
香久山と耳成山が畝傍山を妻にしようと争い続けているように、いつの世も恋の争いはあるもの、という中大兄皇子の歌。別名天智天皇の中大兄皇子は曽我氏暗殺、白村江の戦いなど戦争のイメージがありますが、こういう三角関係みたいなものを歌ったのですね。
このような柱状節理がところどころに見られます。地下のマグマが貫入してきた証拠です。
頂上に以前の畝傍山口神社の場所を示す石碑がありました。
お皿をひっくり返したようなきれいでこじんまりした耳成山(みみなしやま)。ちょっと不自然なところから人工の古墳ではないかという説もあるそうです。
こちら樹々の間からかろうじて見えるのが天香久山です。
天香久山と言えば、百人一首の
春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の
衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)
が有名です。万葉集の持統天皇の歌がベースになっています。初夏のすがすがしい日に天香久山で洗濯された白い衣が、干し竿に並び風にひるがえる姿を想像すると平和でかつさわやかな気分になります。ちなみに持統天皇は中大兄皇子の娘です。
下山は違うルートをたどりました。耳成山をもそっと近くで眺めることができます。
もりあがった柱状節理と背景の畝傍山。
下山後は神武天皇陵に向かいますが、その途中に太平洋戦争で散った若桜を祀る石碑がいくつかありました。戦歌で出てくる「予科練」で知られる海軍の飛行部隊は最期は神風特攻隊として国を守るために命を投げ出しました。
紅白まだら模様の椿。
樹木に見とれる。でも何の樹だろう。樫かな。
いったん125号線に出てから神武天皇陵の敷地に入ります。
90度に右にうねる道。両側には松林の壁。
初代天皇だけあって実に簡素かつ威厳を感じる広大な陵です。アマテラスオオミカミの直系で紀元前660年に即位したのが神武天皇。建国記念日である2月11日は即位の日です。
ちなみに日本神話については最近読んだこの本がオススメです。神様のキャラをうまく漫画で表現してありとてもわかりやすい。
アマテラスオオミカミから神武天皇への流れはこう説明されています。
- アマテラスオオミカミ
- アシノホシホミミ(農業の神、あかんたれ)
- ニニギ(アシノハラナカツクニ平定後の最初の統治者)
- 山幸彦(ニニギとコノハナノサクヤヒメとの間の子。浦島太郎のモデル)
- ウガヤフキアエズ(山幸彦と竜宮城の姉姫との間の子)
- ワカミケヌ(ウガヤフキアエズと叔母である妹姫との間の四男、神武天皇)
このワカミケヌ、後の名をカムヤマトイワレヒコは九州の日向にある美々津を出発し、中国地方を瀬戸沿いに進み大阪から熊野まで進み、そこから宿敵トミヒコ(登美毘古)を大和で打ち破ったことで神武天皇として即位したのです。
巨石をくりぬいた手水。
帰り道に見た深田池。
拝殿の背に見える畝傍山に別れを告げて、ぜんざいを食べて終わりです。
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